ノーベル全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ賞の受賞おめでとうございます

小川じゅんじろう

祝砲

――ノーベル全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ賞の受賞おめでとうございます。


ああ、はい。どうも。ありがとうざいます。


――受賞のお気持ちをお聞かせください。


ええ、そりゃもう、誇り高い気持ちです。

んん――っ。

全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは、五年前、まだ高校生だった私を追いかけ始めました。

偶然にもひらひらの真っ赤なマフラーをつけていたからっていうのが原因です。

それから私は逃げているのです。逃げ続けているのです。

最初の頃はどうしても、なぜ私が、なぜこんなことがと、呪ったものです。それがいまでは全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに感謝の気持ちすら抱いています。追われながら日常生活を送ることも可能になりました。


――食事もですが、トイレや睡眠も、追いかけられながらやってますよね。


ええ。人間って慣れるものですね。成人式にも全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに追われながら出席したんですよ。同級生のみんなとの写真はいい思い出です。見ます?


――拝見させていただきます。ああ、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れも入っていますね。


ええ。みんなが、絶対に私も写真に入れるんだって言うんで、じゃあどうするのかっていったら、一緒に追いかけられ始めたんですよ。あのときは涙がでちゃいましたね。ほら、メイクが取れちゃってる。恥ずかしいけど、私の宝物なんですよ、これ。


――素晴らしいものを、ありがとうございます。それでは、これまでのご活躍について、お話願えますでしょうか。


いざ聞かれると困りますね。

ええと、どこから話したらいいのかな。


――では、なぜ、このような活動を始めたのか。その動機からお願いします。


わかりました。

全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに追いかけられて、半年が過ぎたころだったかな。ニュースを見たんですよ。地元のニュース。うちは田舎なもんで、税収が殆どないんだけど、ごみ焼却炉が老朽化してて解体するにも新設するにも費用がとんでもないなーって。

そこで、やってみたんですよ。ゴミって壊せるんじゃねって。


――それが第一の破壊ですか。


より詳しく言うと、実家の生ゴミだったんですけど。

全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは、本当にその生ゴミを破壊してくれました。こいつは便利だと、もうゴミというゴミを破壊し始めたんですね。


――生ゴミ、粗大ごみ、金属ゴミ、海岸の漂流物なんかも破壊しましたね。


ええ、ええ。それがまたニュースになって、うちの自治体もうちの自治体もって頼まれたんです。不法投棄のゴミや、落石、空き家……。老朽化した役所も破壊しました。こうなってくると環境汚染物質や、温暖化ガスの破壊も頼まれるようになりました。間違えてオゾンホールをちょこっと壊したり、廃棄核燃料を破壊したときにちょっと漏れたりして大騒ぎになりましたけど。


――あなたに被害はなかったんでしょうか。


ええ。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは私の放射線被害も破壊しましたので。


――それはよかったです。しかし、そうやって世界をよくしたところで、また別の問題が降り掛かってきたのですね。


そうなんですよ。まさか全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは危険すぎると、あちこちから攻撃されるとは。

もちろん、このとおり、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れは国家の密約も軍隊も破壊し、ついでとばかりに密室トリックやアリバイも破壊してしまいましたが。まさか◯◯の◯◯がそんなことを考えていただなんて……。


――あ、すいません。いまのはカットです。私が殺されますので。


あらら、失礼しました。

ええと、まっ、そんなこんなで、今に至るというわけですね。


――貴重なお話ありがとうございました。さて、インタビューはこれで終わりですが……。


なに?


――もう少し、お話を続けてもよろしいでしょうか。一つ、お願いがあります。


お願い? なに?


――どうか、私と結婚してください。


……ちょっと、急になにいってんのノブノリくん。ドッキリなら笑えないよ。


――ドッキリではなく、本心です。あなたとの付き合いも、長くなりました。同じ高校だったから、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れと同じく、五年になりますね。


そうだね。五年。同級生だったもんねー。ろくに話したこともなかったのに、一年目から取材だっていって並走をはじめたからびっくりした。何度もバテて離れていったけど。


――情けない話です。ジムで鍛えて、走り方の指導も受けなければいけませんでした。私には才能がなかったもので。しかし、いまでは眠りながらもオッケーです。


そうだねがんばったね。もしかして、好きだからそんなことしてたの?


――好きだからというか、好きになったからです。私は、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れから逃げるあなたに一目惚れをしたんです。


一目惚れって。病気だからそのうち興ざめするでしょ。


――五年も取材をしていまさら興ざめもないですよ。だめですか。


私、この通り、足もバッキバキになってんだけど。腹筋も背筋もえらいことになってるよ? それでもいいの?


――いいから言ってます。


あ~~、ん~~、じゃあ、その~~。

あれだ。あれからお願いしよう。


――なんですか。


同走からお願いします。


――はい。よろしくお願いします。


   ◯


――病めるときも健やかなるときも、

――富めるときも貧しきときも、

――全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れに追われるときも、

――互いを愛し、敬い、慈しむことを誓いますか?


はい。誓います。

はい。誓います。


――それでは誓いのキスを。


…………っ。

…………っ。


――おめでとう。

――お幸せに。

――コングラッチュレーション!

――ぶもおおおおおおおおおおおおおお!!



これからは夫婦二人、いえ、家族三人と、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れとで、幸せに暮らしていきます。


ありがとうございました。

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ノーベル全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ賞の受賞おめでとうございます 小川じゅんじろう @jajaj3

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