○○は○○なんだから○○として扱うのは正しいが……!

 KAC20241のお題は、書き出しが『〇〇には三分以内にやらなければならないことがあった』であることだ。

 ○○の中身は『僕』かもしれないし『田中太郎』かもしれない。もしかしたら○○の中身をめちゃくちゃに長くして書き出しと言いながら、それで作品を終わらせてくる飛び道具を使ってくる人もいるのかもなと思っていたし、正直なところを言えば○○をそのまま○○として使うこと自体は想定の一つとしてあった。

 だが、この発想はない。
 
 この物語の主人公は答案用紙に書かれた二つの○である。

 そもそも彼らに人格を見出そうとしたことが無かったので、この時点で負けを認めないところだが、○○が主人公なのはこの作品におけるジャブのようなものに過ぎない。

 伏線と明確に表記される全く伏していない伏線。

 一切物語に関係ない作者のフリートーク、フリートーク後に行われる配慮という名のコピペ、KAC20241の自由挑戦お題である『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』を伏線は張っといたからな!と言わんばかりに登場させた時は、説明しないといけないのはそっちじゃないだろ!と叫びたくなった。

 ありったけの混沌とネタを詰め込んで、読者に全てのツッコミを預けてこの作品は全てを破壊しながら突き進んでいく。

 どういう小説かと言われれば本当に困ってしまうのだが、おそらく、KAC20241で一番大暴れしていたのはこの小説であったと思う。


(KAC第1回アンバサダー企画お題「書き出しが『〇〇には三分以内にやらなければならないことがあった」/文=春海水亭)

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