最終話 時を超えた恋人

 ある日突然アタシの前に現れた、原始人の男の子ゲンちゃんは。

 そんな彼がいなくなって、それから4年……。


「ククク……アーハッハッハ! ついに、ついに完成したぞ、完璧で究極のタイムマシーンが!」

「井枯せんぱーい、去年も同じこと言ってませんでしたー? 本当にこれでどうにかなるんすかー?」


 ここは大学の研究室。

 4年経った今でも、アタシと井枯先輩はタイムマシンの研究を続けていた。

 理由はもちろん、もう一度ゲンちゃんに会うため。


 そしてアタシの頭には、銀色の輪っかがつけられている。

 信じられないけど、井枯先輩が言うにはこれがタイムマシンなんだって。


「いいかい。タイムマシンと言っても、乗って移動するわけじゃない。その輪っかをつけた人間の強い思いが時空の流れに干渉して、タイムホールが開かれる。しかも今日は4年に1度の2月29日だ。実は今日という日は地球中のあらゆるパワーが活性化される。その力を一点に集めることで今まで問題視されていたエネルギー問題は解消され、さらには最大の障害であった時空の乱れによる宇宙消滅の危機もなんやかんやで防げるという実に画期的な……」

「説明はその辺でいいですって。要はアタシがゲンちゃんのことを考えたら、タイムホールが開くんですよね」

「うむ、そういうことだ」


 そうなのだ。

 井枯先輩が造った新しいタイムマシーンは、会いたいと思う誰かを強くイメージすることでその人の元へと繋がるタイムホールを空けるというもの。

 それをつけたアタシは、早速念じてみる。


 ゲンちゃん……。


 ゲンちゃん……。


 ゲンちゃん!


 会いたい! 会いたいよゲンちゃん!




 ピカー!

 わっ、本当に空間に穴が空いた!


 井枯先輩は、「やはり私は天才だ!」って言ってるけど、そんなことよりアタシの目は、開いたタイムホールに釘付け。

 そしたらその中から、懐かしい声が聞こえてきたの。


「ウホ……ウホォ!」

「ゲンちゃん……本当にゲンちゃんなの!?」

「ウホー!」


 タイムホールの中から姿を現したのは、この4年間一度も忘れたことのないゲンちゃんだった。


 ゲンちゃんはアタシを見るなり、ヒシッと抱き締めてくる。


「ウホホー!」

「ちょっとゲンちゃん、苦しいよ……でも嬉しい!」



 本当に会えたんだ。

 言葉が喋れなくて、ワイルドな見た目をしてるけど、優しくてたくましい、大切な人。


 アタシ、もう絶対にはなさないから、ゲンちゃんもはなさないで!

 再び巡り会えた、大好きな時を超えた恋人を、アタシもギュッと抱きしめた。



 おしまい♪

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時を超えた恋人 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi

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