第9話 再び会えるその日まで

 話を聞いているうちに、沸々と怒りが込み上げてくる。


 何それ! ゲンちゃんを役立たず扱いしたあげく、危険かもしれないタイムホールを調べに行かせたって。

 それが仲間のやることなの!?


 しかも話を聞くと、ゲンちゃんを酷く扱っていたのは、ただの群れの仲間だけじゃない。

 ゲンちゃんの親も、ゲンちゃんのことを叩いて、蔑んでいたのだとか。


 血の繋がった親子だからといって、必ずしも愛してもらえるわけじゃないもの。

 分かってたよ。だってアタシはそれを、身を持って知っているもの……。


「ゲンちゃん!」


 アタシは彼の名前を呼んで、抱き締めた!


「アタシだってそうだよ。ゲンちゃんみたいに殴られはしなかったけど、お父さんもお母さんもアタシを見てくれなかったもの」


 うちの親は二人とも仕事人間で、子供に感心がなかった。

 稼いでいるからお金を出すのは惜しまなかったけど、ご飯を食べる時はいつも一人。

 進路の相談にも乗ってくれなくて、やりたいことがあるなら勝手にやれ。ただし迷惑だけはかけるな状態。

 アタシもそんな親に期待するのはやめて、出してもらったお金で借りたアパートで一人生活をしていた。

 形だけの家族なんかとはいっそ離れた方がいいって思ったから。

 でもね……。


「それでもゲンちゃんが来てからの毎日は、楽しかったよ。今まで生きてきた中で、一番幸せだった! ゲンちゃんのこと、家族だって思ってる! 血が繋がってるだけの形だけの家族じゃなくて、本当の家族だって!」

「ウホ! ウホホホーン!」


『僕もです』って。

 ふふっ。アタシたちずっと、同じ気持ちだったんだ。

 なのにこのままサヨナラなんて、やっぱりイヤ。


 だけどゲンちゃんから発せられる光は、強さを増していく。


「いかん、もう時間だ」

「ゲンちゃん! アタシ絶対、タイムマシンを完成させるよ! それでまた、ゲンちゃんに会う! タイムリミットの無い、ずっと一緒にいられる方法を見つけるから。だからその時は……」

「ウッ……ウホホー!」


 ……まだまだ言いたいことはたくさんあったのに。

 まばゆい光に包まれて、ゲンちゃんは消えちゃった。


 まるで最初からいなかったみたいに、跡形もなく。

 行っちゃった……。

 これが、世界が元に戻ったってことなんだね。


 するとうつ向くアタシの肩に、井枯先輩がポンと手を置いた。


「私ももちろん研究を続けるよ。そして迎えにいこうじゃないか、ゲンちゃんを」

「先輩……もちろんです。だってゲンちゃんと、約束しましたもの」


 込み上げてくる涙をのみこんで、笑顔をつける。

 ゲンちゃんは最後に、アタシが言いたかったのと同じことを言ってくれた。

『もう一度家族になろう』って。


 待っててねゲンちゃん。

 きっと必ず、また会えるから。


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