エピローグ

 おいたんと出会ったのは精神科病院の喫煙所(今はもう無い)という特殊な場所だった。私は、いつもニコニコと話をしてくれるこのを好きになったようだ。もはや当時の事は私の記憶にあまり無いのだ。


 おいたんとカップルが成立して二カ月後には、多剤大量処方の副作用が牙をむき、私は死にかける目に遭うのだが、そこから奇跡の回復を遂げて、長いリハビリのあと、しっかりとした認知能力、判断能力、思考力、諸々を取り戻した。


 おいたんと結婚したのは、私が就職活動をしていた頃だ。就職してから苗字が変わるよりも、さっさと変えてしまおうと思ったからだ。


 誰でも好きになっちゃう病の最中に好きになったおいたんは、神様からのプレゼントだったと言って良い人だ。


 穏やかで、私を大切にしてくれて、私の病気にも理解があり、私の家族にも優しくしてくれるナイスガイ。それがおいたんだ。


 私の巻き起こした数々の恋のあれこれは、もはや私の黒歴史だ。今思い出しても恥ずかしいし、当時告白した人たちに対しては「ち、違うんです。気の迷いです!」と訂正して回りたいほどだ。


 でも、最後に好きになったおいたんだけは本物の恋だった……と、思いたい。


 今でも私はおいたんが大好きだ。おいたんの笑顔は私が生きる動機になっている。


 きっと、ふらふらとあちらこちらで恋の種を撒きまくる私を神様が見ていて、「こいつはビシッと決めてやらないと、こいついつか犯罪に巻き込まれるぜ」とでも思ってくれたのだろう。


 今思い返しても、当時あちらこちらで告白しまくっていた私は傍から見ているとイタイ。


 が、そんな出来事があったのは紛れもない事実なのである。私はこれからもこの恥ずかしい記憶と生きて行かなければならないのである。


 だから……ね。この記憶をネタとして活用できる場を下さって嬉しいですカクヨム運営様。今思い出しても恥ずかしくてPCを投げ飛ばしたいです。


 誰にでもある黒歴史。眼帯をして右手に龍を宿していた事が黒歴史の人もいるかもしれない。深夜のテンションでポエムを量産してそれを親に読まれた事がある人もいるかもしれない。


 私の黒歴史は────誰でも好きになっちゃう病だった。もう嫌だ。この記憶……。



────了

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰でも好きになっちゃう病 無雲律人 @moonlit_fables

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画