第3話 姫と温泉旅館
前回、リンドウと会ったときに興味を示してくれた方がいらっしゃったので、3人で会うことにしようと、計画を立てました。皆、忙しかったりなんだったりして、2回ほど計画変わってますが、計画は生き物だから仕方ありません。だから、といって当日、チェックイン以外は成り行き次第なのはいかがなものでしょうか、と問われたら、そうですね、と笑顔で頷くでしょう。でも、北海道で行き当たりばったりやっているので怖くないです、私は。
●
荷物は基本、少な目を心掛けています。できれば、リュックにおさまるぐらい。両手は自由になっているのが望ましいです。リュックも中身は替えの肌着と下着、靴下、ガジェットの充電器とモバイルバッテリー、ハンカチやティッシュと言った細かい物が中心です。シャツとズボン、上着は2日ぐらいなら使いまわします。
そういう主義なのになぜ、今回はスーツバッグにメイド服を詰め込み、化粧ポーチに化粧品一式を入れているのでしょうか。勢いって怖いですね?
●
当日、駅で二人と合流してから、まずはお昼ご飯に定食屋へ。そこそこ席埋まってます。ストーブの多さがスキー場のレストランを連想させます。雪が積もる地域ですから正しい気がします。滑ってた時期もあるんですよ、直滑降で。あのスピード感が癖になるんですよ? 品数が多いので悩みましたが、カレーがおいしいそうなので、カツカレーの大盛りを頼みました。
席についてから、
「量、多いですよ」
「大丈夫です」
意外と食べられるんですよ、私。
●
手伝おうか、とスプーンを構えているリンドウをよそに食べきりましたよ、ええ。あちらこちら連れて行ってもらいながら、皆で顔合わせて、
「早めにチェックインしましょう」
「1時間早められますよ」
「では、そういうことにしましょうか」
という趣旨のやり取りの後、旅館直行です。道中、駐車場がわからなくて、道に迷ったりしましたが無事到着です。
●
趣のある玄関ホールで受付を済ませて、女将さんの案内で部屋へ。階段を下りたり上ったり下りたり迷路のようです。建蔽率を何とかしようとした結果、地べたを這う迷路になると、別の宿で聞いた記憶があります。今回もそのパターンでしょう。
部屋で宿の設備の説明から夕飯まで一通り説明をして女将さんが去っていきました。電源タップがあればよろしく、とお願いもしました。このメンバー、持ち込んでいるガジェットが多いのです。名目は原稿やネタだしの合宿なので仕方ないです。Kindle Fireにキーボード繋いでいる人、Chromebook持ち込んでいる人、iPad Pro持ち込んでいる人、いろいろです。OS被らなかったのは地味にすごいと思います。
●
設営が終わったところで、すでに布団が敷いてある寝室に移動して、メイド服に着替えます。なんで二人も着替えているんでしょうね。ああでもないこうでもない言いながら着替えて、Kindle Fireの人(長いので以降Kさん)にiPhoneをもってもらって、メイド服二人でポーズとって撮影してもらったりなんだったり。
Kさん曰く、旅館にいると感覚バグるけど、慣れてくるといい刺激になるのだとか。日常にスパイスを加えられたようで何よりです。夕食の時間ぎりぎりまで、メイド服で過ごしてました。物がいいだけに着心地いいし、温かいんですよね。
●
夕食は車で揺られて十数分の定食屋、おいしくいただきました。
「姫様、無理して食べなくていいんですよ」
「そんなことは――」
送迎の車の第一陣が来たので急いでデザートのアイスを食べたら、きーん、ときました。
●
宿に戻ってから温泉巡りのプラン立て。ここはKさんがGoogleマップで評価を調べ、スコアリングしていきます。ここガジェット好きの私も頑張るところ、と思いつつ、慣れた手つきで調査内容を紙に書きだしているのに感心している間に終わりました。調べ方ひとつとっても、経験の違いがでるんですね。
そんな感じで手堅いところを数か所を巡ろう、と外に出たら風がとても冷たいです。全件巡ってたら身体が先に参ってしまいそうです。そうは言いながら、どうやったら一筆書きできるか考えるKさん。そうですね、やりますよね、そういうの、と思ったのでこれは職業病なのかも。
外湯は同じエリアなのに湯の花が浮いていたりいなかったり、お湯の色が違ったりで、何が違うのだろう、ときゃっきゃしながら巡ってました。旅館に戻ると大浴場へ。外湯が熱いせいかお湯が温く感じますが、ほかに人もいなかったので、のんびりできてよかったです。
●
部屋に戻ると、買いだめしておいたお菓子をつつきながら、原稿書いたりネタだしやったりしてました。あまり、無理をすると翌日に響くので、体力尽きた人、あるいは規則正しい生活する人から布団にもぐりこむ流れ解散。私は行きの新幹線で書いていたショートショートを整えてひとまず終わり。
もともと寝つきの悪い体質なんですが、その日は布団にもぐったらそのまま眠れました。これが旅行の力なのでしょうか。
●
朝は朝食に間に合えばいいよね、とゆるい感じで調整していたので起きる時間ばらばらでした。確か、Kさん、私、リンドウの順番で起きていたと思います。朝食までそれなりに時間があるのでKさんと露天風呂へ。
道中が迷路のようでオートマッピング機能欲しいと思いました。方向音痴なんですよ、どうでもいいですけど。
旅館の建物にぐるりと囲まれていて、前を向くと中庭、少し上は壁、さらに上は空と面白い光景でした。
お湯の温度が高いのでさっと切り上げて部屋へ。
●
朝ごはんは和食でした。おにぎりになっているのは珍しいです。小皿多めで満足度高かったです。女将さん曰く、よく食べると思ったので大きめに握った、とのことでした。いい仕事してますね。
●
リンドウの運転で付近をドライブ。決まっているのは帰りの時間だけなので、かなり無茶ぶりしてました。道の駅でお土産買ったり、蕎麦屋で蕎麦食べたり、まわりに何があるのか解説を聞いて、ああ、ここに住んでいる人なんだ、という実感がさらに強くなりました。前回もそういう話聞いていましたから。
最後は駅近くの喫茶店で、コーヒーとスフレをいただきました。スフレ、あんな熱いデザートだとは知りませんでした。食べるのがタイムアタックだとは……。
●
30分ぐらい前になったら駅へ移動、余裕は大事です。リンドウに見送ってもらいながら、Kさんと一緒に改札内へ。Kさんの新幹線が先に来たので見送り、私は待合室で、1泊2日の旅行を振り返ってました。
●
新幹線に心地よい揺れと疲れから来る眠気を噛み殺しながら、関東平野は文字通りの平野なんですね、などと感慨にふけっている間に駅に到着。降りて温度差と周囲の建物の密集ぶりに帰ってきた実感がわいてきました。
●
メイド服ですか? クローゼットの中にしまってありますよ。
姫の旅行記 姫宮フィーネ @Fine_HIMEMIYA
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。姫の旅行記の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます