孤独に真実を追い求める本格ミステリー

凶悪な強盗事件を起こした挙句に、5人の命が奪われることになった自動車事故を引き起こした、藤池光彦。

彼の墓を訪れた徹の前に、藤池の父、稔が現れる。

藤池光彦が起こした事故は、当時警官だった徹が追跡中に起きた出来事で、2人は法廷で顔を合わせていた。そのことがきっかけで藤池家に呼ばれた徹は、事件をもう一度調べ直してほしいと懇願される。

断りきれずに、ひとりで再捜査を始めた徹は、思いもよらない真実を知ることになる——。



徹は、間違ったことはしていないと思っていても、自分が追跡をしたことで事故が起きてしまったのではないかと、自分を責め続けています。

そんな徹に、事件をもう一度調べ直してほしい、と言った藤池光彦の両親も、息子の無実を証明できなかったことを悔やんでいます。

登場人物たちが苦しんでいる中で、警察という大きな組織の闇が、本当にあった出来事なのではないかと思うほどに、リアルに描かれているのが印象的でした。真実が明らかになっても、全ての人が救われるわけではないのですが、腹立たしさを覚えます。

徹や藤池家族だけでなく、登場人物たちは全員が主役のように感じました。本当に悪事を働いた人間は平然と変わらない日々を送り、何も悪いことをしていない人たちはみんな自分を責めている。

物語が進んで救われたように見えた人も、実はまだ苦しんでいて、全ての真相が明らかになっても、やるせない気持ちが残りました。

本格ミステリーが読みたい方にオススメです。

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