34話 阿加保(あかほ)の里
「お犬さまが
「あなたさまが、
シェマは、感謝の気持ちでいっぱいになった。
「いえいえ、
「お犬さま」
シェマは、
「ぽち、神のハシクレ。
赤土の
「今日は
願ってもない。満ち潮になるまでに、シェマたちは
(わが
昨夜のことを思い出そうとしたが、もはや、ぼんやりとしていた。神の御姿は、そのそばを離れると
海の
そんなユーフラテス皇子を、シェマは少し、かわいいと思った。
ユーフラテス皇子は、
(好き、ってことなのかな)
むずがゆくなった。
『悪いか』
すぐに、内から返答があった。
(いいえ)
シェマが嘘いつわりを申していないことは、ユーフレシア皇子にも、わかっている。
心根の底でつながっている、ふたりは心をごまかせない。だから。
『叔父上、ティフィンを誘ったりしないでくれ』
めずらしく神妙に、ユーフレシア皇子が言う。
「誘ったり? していませんよ」
『叔父上は気がついていないだけだ』
ユーフレシア皇子は少しいらついたようだ。
「すいません」
こんなとき、シェマは謝ってしまう。
「
上座に座っているのは、シェマを真ん中に右にティフィン、左にカグツチだ。保知は、自ら遠慮して土間辺りにいるとした。そこで、
「おいしいです」
シェマは椀の水を飲み、ほっと一息ついた。ティフィンもだ。その水の清浄さに驚いていた。
「清水ですか。この海岸寄りの土地では井戸を掘っても海水が染み出すと思っておりました」
「おっしゃるとおりにございます。ここは、河口の水にも海水が混じりましてございます」
シェマは目を丸くした。
「では、川の上流に
「いんや、いんや」
里長は、満ち足りた笑みを浮かべた。
「井戸の
見捨てられ皇子の十三詣り ミコト楚良 @mm_sora_mm
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