エピローグ

次の日は晴れていた。

こっそりスコップを持ち出して、おばあちゃんにいつも通り行ってきますの挨拶をして、家を出た。

小屋の床の一部分を剝がして一生懸命掘った。

どれくらい経ったか分からないけれど、とにかく掘って、そして、カツン。音がした。

慎重に、傷つけないように掘っていく。それでも傷はついてるのかもしれないけれど、大切な人の身体だと思えば、私にしては珍しく、丁寧になれた。


最初に出てきたのは頭蓋骨だった。

黎也の面影なんて、何一つなかった。

ただの骨で、ただの物言わぬ屍だった。


頭蓋骨をゆっくり床の上において、掘るのを再開した。

黎也を掘り出すのは思いの外、時間がかかって、夜に差し掛かるところでようやく、いくらかの大きな骨が全部出てきた。


頭蓋骨以外の骨はよく分からない。

多分肋骨のようなものと、腕だか足だかの骨と、ゴツゴツした石みたいな骨があった。

こんなことなら、理科と保健の授業を真面目に受けておけばよかった。

これが黎也のどこで、何の骨か分かったかもしれないのに。


黎也は最初から最後まで現れなかった。

ただ何も言わない死体として、床の上に蹲る私の隣に存在していた。

おかしくなったのかもしれない。

ただの骨が愛おしくなって、彼の頭蓋骨を抱きしめた。


「ごめんね」


黎也を殺した男の孫という事実は、永遠に取り消すことは出来ない。

それでも彼のことが好きで、きっと愛していて。

ただ、涙と共に謝罪の言葉をこぼすしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひまわり畑でまた逢いましょう 倉野ユウ @kuranosakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ