.Ⅲrd 05
以降の活躍は語るまでもない。死の果てまで、この街の果てまで追われた目黒ヤクザ御一行は、死よりも恐ろしい追撃を食らって、街から逃げ出した。その夜の活躍は街から街へと称賛が響き渡り、その名は轟く間に轟いていった。チュウカ、チュウカ。この街そのものの存在で、街を守る絶対的守護神。どこかの刑事も楽しいお酒で好き勝手に吹聴していたらしいし、その噂の回り具合は光の速度を超えていたのではないかと言われるほどだ。
もちろん、裏街なんて呼ばれるような街だから、ヤクザは常に住み着いている。多少の暴力はある。だけど、好き勝手にやっていいわけではなかった。好き放題にして良いことは、何一つ無かったのだ。勘違いしたのだ。自分をなにか勘違いしたのだ、彼は。今でさえ、絶対的チカラを手にし、縦横無尽に飛び回り、街を駆け巡っているチュウカでさえ、好き放題に、好き勝手にはやっていない。多少暴れはしているものの、それは喧嘩程度であり、街全体を揺るがす時には必ず現れて、事件対処に向かう。なぜならチュウカは街そのものだから。彼女に、あの悪魔に託された街そのものだから。
「やあ、チュウカ」
「よお、アキラか」
「飯でも食っていくか?」
「別にいいけど。俺は誰にも尻尾を振らないぜ?」
「はいはい。ほら、入れよ」
「おじゃましまーす」
アキラの店も、あの一件から親しくなった人間の一人なのかもしれない。かもしれないと言うのは、それは本人に自覚がないからである。チュウカとしては当たり前のことをしただけで、だいそれたことは何もしていないつもりなのである。呼び名が、周りが呼ぶ名前が変わった。変わったとことといえば、その程度のことかなと思う程度なのだ。だから、何もしていないのだ。大したことは、本当に何も。
街は今日も虚ろ。白熱灯とネオンのエルイーディーが点滅して、人々を誘う。酒に、食に、性欲に、強欲に、自我欲に。
「なんだ、外が騒がしいな」
「喧嘩だ。面白そう、ケケケ」
「おい、チュウカ。あまり派手にやるなよ」
「まあ、そうだな。ほどほどにするよ。ジロ……じゃないか、アキラに迷惑かけても仕方ないからな」
チュウカは大急ぎで食事をかきこんで済ませると、得物を持って店を飛び出し、今日も街と人々を混沌に陥れるべく、参戦していくのだった。
CH‐U‐KA Ⅱnd 小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】 @takanashi_saima
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