本作にレビューを書きたいなと想っているうちに、ファンからのレビューが出揃っていて、完全に出遅れました。
ので、簡単に。
『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』、これと、自主企画の三題噺『広告・元素・陰謀』をあわせて、まあ、感心するほどお見事でした。
きりりとした女性が鐘古さんの得意とするヒロイン像ですが、それを生かし、突き進むバッファローに意味をもたせ、広告と元素と陰謀を拾い、三分以内に何かをしなければならない理由をきちっとつけて、あのラスト。
「わあすごい」と脱帽しました。
自分のことは自分でケリをつける。この誇り高さをのぞかせる鐘古ヒロイン。怒りと不満の象徴のバッファローを俯瞰し、軽蔑の眼で「そこには加わらない」と決別したものの、ふたたび戻ってきた彼女。
荒れ狂う箱庭に捜すのは、幾度も彼女を引き寄せてきたあの人の気配。そして彼から届く彼女へのメッセージ。しかし。
鐘古ファンにとっては満足度がとても高い作品でした。うまいですよね。
この作品は、ただのゲームを超えた深いメッセージを持っている。
読者は、この物語の中でT・アリッサというキャラクターを通じて、フルダイブ型ゲームの世界を冒険する。しかし、彼女の旅はただの遊びではない。
それは、現実世界の複雑さと、人間性の探求へと導かれる。
小説は、ゲームの中での戦闘訓練や、政治的陰謀、そして最終的には人間同士のつながりというテーマを扱っている。
これらはすべて、バッファローの群れが破壊し、元素へと還元するという象徴的なイメージを通じて表現されている。
この強力なイメージは、物語全体を通じて繰り返され、読者に深い印象を与える。
この破壊から生まれる再生のプロセスは、現代社会の混乱と苦悩を超えた新しい可能性を示唆している。
作者は、この物語を通じて、人間の創造性と、技術がもたらす可能性と危険性を探求しており、『エレメンタル・ワーカーズ』は、ただのゲームではなく、私たち自身の内面と外界との関係を模索するメタファーだと考えられる。
本作品は、現代社会のさまざまな問題に対する新たな視点を読者に提供してくれるだろう。