第4話 おしゃれ

 教員は興奮冷めやらぬ状態だった。

 高学年の男子生徒はホームルームの時間に、ひどく怒られた。ほとんどが身に覚えがあった。

「あの犬はな、保健所で処分されるんや」

 初めて聞く話だった。


 翌日、学校に保健所がきた。

 保健所の担当者が講堂の前にオリを出した。男性教員が見守っている。その中に、女子小学生がいた。

 教員が促すと、女の子が床下に向かって、犬の名前か何かを呼んだ。

 犬が勢いよく出てきた。犬は可愛らしい洋服を、着せられていた。


 隆、洋一、修司は足取りが重かった。

 犬を護ってやろうとした小学生。最後まで、オリに入れられようとする犬に、しがみついて離れなかった。それに比べて、自分たちはずっと犬をいじめてきた。恥ずかしいことだった。

(勲おじさんやって、ボクらのこと許してくれんやろな)

 隆たちにはもう、駆け込むところはなくなっていた。


「なんや、お前ら。今日は、えらいしょんぼりして」

 修司の父・勲が勤めから帰った。


「そうか。そんなことがあったんか。犬に罪はないのになあ」

 勲は声を落とした。


「その子、家で犬が飼えん事情が、あったんやろなあ」

 修司の母親だった。

「こんなのは、どうやろ。うちで保健所から引き取って、里親になったら。修司が世話するのなら、飼ってもええで。人を噛んだ犬でも、お父さんが頭下げて行ったら、なんとかなるんと違う。その子やって、これからも、会いにこれるやない」


 勲は修司の頭を撫でた。

「修司。ほんまに世話できるか?」

 修司は飛び上がって喜んだ。

(叔父さんとこ、寄ってよかった)

 洋一と隆の表情が、生き返った。

 

 勲が保健所から犬を連れ帰った。女の子が母親に伴われて、やってきた。学校のそば、電力会社の社宅住まいだった。再会を喜び合っていた。

「おばちゃん。これ、着替えです」

 何枚かの洋服を、修司の母親に渡した。手作りだった。

(まあ、おしゃれなこと!)

 修司の母親は微笑ほほえんだ。


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続 村の少年探偵・隆 その10 動物愛護 山谷麻也 @mk1624

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