舞台は近代文明社会。AIとの出会いが、少女を"ヒーロー"へと導く。

独自の世界観を持つ作品にありがちな、「冒頭からいきなり戦い始める」、「世界観の設定を地の文でクドクド説明する」という読んでて疲れる部分が全くない。むしろ、ルナを軸にした「人間同士の触れ合い」で物語が展開されていて、作品世界にすうっと没入できた。

天真爛漫でちょっと向こう見ずなルナが、個人的によかった。母やハルや沖永といった、ルナ以外のキャラにも、それぞれ抱える事情や想いがあって、人間ドラマとして楽しめた。

無駄のない、それでいて丁寧な文章のおかげですごく読みやすかった。頭の中で綺麗に映像化された。ただ、「威圧感を感じる」「違和感を感じる」「終焉の最後」「人間の人智」「行動を行う」など、所々二重表現が見られた。

最後に。これは極めて個人的な感想ではあるが、せっかく良いキャラだったルナを殺すのは勿体無いような気がしたが…。あくまでこの作品含め、次作の主人公はアルファなのだろう。とにかくこの章においては、ルナがアルファから夢や勇気を、そしてアルファがルナから人の心を、と、人間とAIが互いにないものを学び合う構造になっているのが素晴らしかった。