美しすぎる異性は、時に畏敬の対象となる。本心では、あの白くて滑らかな肌に、触れたくて触れたくて仕方ないのに、いざ本人を目の前にすると、昨晩いきり立っていた息子を力強く掴んでいたはずの手が、どうにも情けない震えを刻み始める。甲斐性なしで、意気地なしで、ヘタレで―そんな自分が、嫌になる。だけど、心底嫌いには、なり切れない。
私も今まで、幾度となく味わった感情です。読んでいる途中、あまりのもどかしさに唸りかけましたが、同時に、あと一歩の勇気を出せずに儚く散った自らの恋路を思い出して、「ああ、これは他人事じゃないな」と胸に沁み入る思いでした。今では若き日の思い出―それは苦いのか甘いのか、あるいはその両方なのか、私には量りかねますが、作者様にとって彼女は、きっと、誰よりも近いのに、誰よりも遠い存在だったのだと思います。
実感のこもったエッセイでした。読ませて頂き、ありがとうございました。