第2話 卒業

 三年生卒業式の日。


卒業式を終えたあとの帰りぎわになって、みゆと合流した。


「よっつんは、幸せになりなね。」

「何だよ、卒業だからって。」

「いや、もう話すことも電話もしないから。」

「いいじゃん、みゆ電話してくれば。」

「いや、よくない。

わたしがよくないよ。

これで、さよならだよ。」


涙声でみゆは、そう話す。


「じゃ、さよなら。」

「最後くらい、聞きなよ。」

「何を。何をよ。」

「いつでも、電話してきなよ。いつでもいいよ。また話しきくよ。」

「そんな優しいこと言うなや。よっつん。

さよならできないよ。

もう聴かない。じゃね。」


そう言ってみゆさんは去っていく。


ばーか。


ひとりで何でも決めるなよ。

ずっと話ししてたじゃん。

二年間。


でも、この関係に名前はつかなかった。

名前は、つかないまま、時だけ過ぎていく。



 現代いまもまだ名前はつかない大学生の夏、みゆのこと思い出す。



 みゆが近づいてきて、

部活時間、声をかけられた。


「これからよろしくね。」


「よろしく。」


「普段は照明係でやってるけど、

最近演技に混じるようになったから、ほとんど素人だよ。」


「そうなんだぁ。」


「名前は」


「名前は四津夏だよ。

わたしはクラスは三組。」


「みゆ。

クラスは二組だから違うクラスだね。」


「そっかぁ残念。

クラス隣でも話しかけてきて大丈夫だよ。」


「そう、わかった。」


「じゃね。」


「じゃ。」



はじまりから、気軽なやつ。

はじまりから、そっけない。


みゆ、かぁ。


高校の残り時間で、どれだけ話せるんかな。



夕暮れの時間、窓から差し込む光、

みゆの顔が照らされると、

なんだか、照れたような表情だった。

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名前のつかない二人の関係 十矢 @onething_heart

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