コミカルでありながらもシリアスな要素を含んだ愛すべきキャラクターたち

 個性的なキャラクターたちが巻き起こす、ユーモアとシリアスさが絶妙に混ざり合ったユニークな探偵小説です。

 主人公の早乙女瞳は自称ハードボイルド探偵ですが、その言動は子供っぽく滑稽な場面が多く、ハードボイルドとは程遠い愛すべきキャラクターです。バーのマスターとのやり取りや、借金取りから必死に逃げる姿などコミカルな描写が秀逸です。

 一方、金貸しの安田拓朗は優しい性格の持ち主ですが、仕事柄しぶしぶ乱暴な言葉を使わざるを得ない悲哀が感じられ、また行方不明になった犬を無事に見つけ出そうと奮闘する姿に好感が持てます。

 そして、借金のために犬を売ろうとする鈴木の卑劣な行為と、それを叱責する拓の正義感あふれる姿が対比され、小説にメリハリをつけています。

 コミカルでありながらもシリアスな要素を含んだストーリー展開と、個性豊かなキャラクターたちが織りなすやり取りが面白く、続きが楽しみになる作品です。

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