第43話 信じてる…

「そ、そんな……マスターヨリミチ! アナタは……アナタは狂っている!」


「狂ってこそ到達出来る領域があるのです。アナタ方ではまだ理解できないでしょうねぇ……」


 冷静になって周りを見ると押さえ付けている信者達もどこか困惑した表情だ。


 察するに……コイツはマスターの暴走のようだな。

 逃げるなら……他のヤツと言い争っている今だ!


「なあ……アンタら……いいのか?」


 押さえ付けている信者に耳打ちする。


「このままマスターの言うこと聞いてたらアンタ達のソレ・・もいずれ……チョキン! ってことになるかもしれないぜ?」


 その言葉を聞いた信者達の拘束の手が緩む。

 ふっ……そうだろうよ。オレを押さえるより自分のソレ・・を押さえなきゃな……ソイツが男って生き物さ!

 

 瞬発的に体を起こして拘束の手を振り払うと、ドアに向かって全速力で駆ける。

 

「あばよ! マスター! 正気に戻ったら、また会おう!」

 

「ええい! なにをやってるんですか! 追え! 追いなさい!」


 マスターの怒号を背中に受けながらドアを蹴破り、オレは危機を脱した。

 

 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 

 と、まあ……こんな具合で。マスターは完全にイカれちまってる。


 な?

 

 ヤベーだろ?

 

 想像の3倍はヤバイだろ? チ〇ポ切るってんだぜ? 正直もう仕事どころじゃない……さっさと逃げなければ……。

 

 え? 拓はどうするんだって?


 オレは……オレは拓の事を信じている。

 お前らには分からんだろうが……男同士の絆が、そう囁いている。

 オレには分かる……拓はオレが無事に逃げる事を望んでいる……ってな。

 そもそもアイツをどうこうしようってヤツがいるわけないだろう? 大丈夫。大丈夫。

 

 それより……


 しつこいヤツらだ。まだ、バタバタと追いかけて来てやがる。どこかに一旦身を隠せればいいのだが……

 ん? 身を隠すより前を隠せって? おいおい、そいつは言いっこなしだぜ。そんなヒマあるはずがないだろう。 

 

 むっ……バカ話はここまでのようだ。

 マズイ! 向こう側からも人が来た!

 

 とりあえず開いている部屋に飛び込み鍵をかける。


「ここだ! ここに逃げ込んだぞ! カギ閉めやがった!」


「入るぞ!誰かドア壊せ!」


 ドアの向こう側で信者共がガチャガチャやっている……ドアを壊されるのも時間だ。


 ど、どうする?

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探偵はウーロン茶を片手にハードボイルドを語る ナカナカカナ @nr1156

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