第42話 ラブエンド…

 コ、コレ・・

 

「えっと……え? どういう意味?」

 

「はは……そのままさ。チ〇ポを切り落とすのだよ」


「は、はぁっ!? な、なにを……なにを言ってるんだマスター! ふざけるな!」


「ふ……逃がしはしないよ早乙女君。さあ、取り押さえなさい」


 マスターの指示でワラワラと信者共が複数人でオレを押さえ付ける。


「は、離せ!」


 四股に力を込め、振り解こうと足掻いてみるが……くっ……多勢に無勢か……どうにもならん。

 

 チ、チ〇ポを切り落とすだと!?

 なぜだ? なぜそうなる!? 男女間の愛が脆いからオレのチ〇ポがなくなるって? どういう理屈だ!


 チ〇ポがなくなったら……オレは……オレは……


 ……。


「え? じゃあキ〇タマは?」


「別に……チ〇ポだけでいいけど」


 た、玉だけぶら下げて生きていけと!?


 なんでそんな面白いフォルムにされなきゃならんのだ!


「うわああああああ! やめろぉ! 離せ!! 切るなら、せめて両方切りやがれー!」


「マ、マスターヨリミチ! これは……これはどういうことなのですか!?」


 取り巻きの一人が困惑した表情でマスターに詰め寄る。


「我が教団は『ラブアンドピース』がモットーのはず……このような暴力的な行為は……ほら! やめましょう! ラブアンドピースですよ! ラブアンドピース!」


「はぁあ? らぶあんどぴーすぅ??」


 一人の男性信者のにこやかなダブルピースにマスターは怪訝な顔を見せる。

 冷静になって周りを見ると押さえ付けている信者達もどこか困惑した表情をしている。


 どういう状況だ?


「ラブアンドピース……ふふ……ラブアンドピースねえ。君……教団に入ってどのくらいだね? ちゃんと聖典を読み込んでないんじゃないかね?」


「教団に入って5年……毎朝毎晩、聖典は読み込んでいます。ここの教えは深く理解して……」


「君はぁ!」


 男性信者の言葉を遮るようにマスターが突然大声をあげる。


「君は……5年も居てまだそんな……いや、君だけじゃあないな……君達は、いつになったら私のレベルまで来てくれるのだね。君達が教えをよく理解していない証拠だよぉ」


 む……仲間割れか?

 だとしたら好都合だ。すきを見て逃げてやる。


「いいかい? 愛とは……愛とは捨てることと見つけたり! 全宇宙平和を成すには煩悩など邪魔なだけだ! チ〇ポの存在こそがセ・ガ・サタンが贈った罠であるということにどうして気付けない! ラブアンドピースぅ? 違いますねぇ……違いますよぉ……」

 

 マスターはニタリと笑い口角をあげる。

 そこにオレの知っているいつものマヌケなマスターはいなかった……。

 マスターは……マスターは……

 

「『ラブ・エンド・ペニス愛はチ〇ポの終わり』……どうです?素敵でしょう?」

 

 マスターは……狂っている。

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