異世界転生したけど、何時まで経っても世界が平和になりゃしません


 ブラック企業で社畜として生きていた俺が、過労で命を落として……何と、異世界に転生してしまった。漫画やアニメみたいな展開に最初は戸惑ったけど、成長するにしたがって、少しずつ慣れていった。


 さて、俺が転生したこの異世界だけど……魔物が存在する結構危険な世界だ。そして、その魔物達の頂点には魔王が君臨しているのは言うまでもない。


 更に何の因果か、俺はこの世界の勇者に選ばれてしまった。生まれた国の国王陛下から旅立ちの資金と装備を与えられ、屈強な仲間達と共に苦難の旅路の末に遂に魔王の討伐に成功した。


 息絶えた魔王の死体、歓声を上げる仲間達。俺はというと――。


「(や、やっと終わった……この1年、命懸けだったなぁ)」


 内心ホッとしていた。何せ、前世ではブラック企業勤めの末に過労死だったもんなぁ……折角、新しい人生を得たのに今度は命懸けの旅ときたもんだ。


 これで漸く、平凡な日々に戻れる……等と考えていると。


『クックックッ……』  


 ……あれ、何この不気味な笑い声? 何か、物凄くいやーな予感がするんですけど?


『勇者とその仲間達よ、そやつを斃したくらいでいい気にならぬ事だ』


「だ、誰だ!?」


「姿を見せなさい!」


 仲間達が武器を構えて警戒する。あー……何てこったい、これってアレだよね?


 魔王を斃したら、その後ろに真の魔王が居るパターンだよね? ゲームや漫画とかでよくあるパターンだよ。


 頭上に空間の歪みが発生した。おお、真の魔王の登場か……ん?


 何か、やたらと無数の影が見えるな。ま、まさか直属の部下と一緒に出現するのか!?


 不味いな、ただでさえ魔王との戦いで消耗しているのに。俺と仲間達は緊張した面持ちで真の魔王の出現に身構える。


 出現したのは、まるで武人のような雰囲気の威風堂々とした魔王。あれが真の魔王……って、あれ?


 な、何かおかしいぞ? 同じ姿の色違いっぽい奴等が無数居るんですけど!!?


「勇者よ、我が部下の魔王をよくぞ斃した。しかし、奴は私の部下でしかない――私こそが、真の魔王だ」


 真の魔王の隣に居る同じ姿の色違いの奴が前に出る。


「そして、私が真の魔王の魔王だ」


「そして、私が真の魔王の魔王の魔王だ」


「そして、私が真の魔王の魔王の魔王の魔王だ」


「ちなみに私は真の魔王の魔王の魔王の魔王の隣に住んでる魔王だ」


「それから私は――」


「もうええわい!」


 自己紹介してくる真の魔王達に我慢出来ず、俺はツッコミを入れた。


「つーか、多過ぎだろうが! 真の魔王何人居るんだよッ!?」


「108人だ」


「煩悩の数と同じだけ!? いくら何でも多過ぎるっつーの!!」


『さぁ、勇者よ! 冒険はこれからだ!』


「何楽しそうに新たな冒険を促してんだよ! い、いやじゃあ~、折角魔王を斃してのんびり暮らそうと思っていたのに!!」


 異世界転生したけど、何時まで経っても世界が平和になりゃしません……真の魔王が多過ぎて、冒険が終わらんわァァァァァァァァ!!


「勇者、行こうぜ!」


「私達の手に世界の命運が懸かっているのよ!」


「何でお前等はそんなにノリノリなんだよ!?」


 新しい冒険にワクワクする仲間達……お願いだから、誰か勇者交代してくれませんかね……(´;ω;`)。 





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生したけどシリーズ ロヒー2号 @sionasterdiaz

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画