小野篁って誰、……ですと?
もしや其方、TAKAMURA三部作を読んだことがない、と申しますかな?
……あなや! 現世と冥府を行き来したという、あの伝説の篁様の物語を読んだことないとは、なんと勿体ない。
え、平安時代の小説は難しそうでとっつきにくい?
ご安心なされませ。本作は平安初心者にも優しーく分かるように、作者様が丁寧な説明を添えて描かれておる。何も恐るることはない。それに、三部作どの部から読んでも大丈夫と作者様も仰っておられるのだ、このSANGIからでも十分楽しめますぞ。
ん、どうせお堅い貴族様しか出てこないんでしょう?
いやいや、本作は見目麗しいあやかしの姫も多く登場し、ストーリーに花を添えておる。女子好きの在原業平も常に鼻の下を伸ばしておるわ。彼らとの白熱したバトルも見どころであるぞ。
どうだ、少しは気になってきたかな。全てを読み終わる頃には、其方も篁の魅力に気づき、囚われることであろう。
すっかり本作のファンとなってしまった、この私のように……。
あの男は、あやかしが見えるらしい…。平安初期、そんな噂から始まった、小野篁(たかむら)の伝奇アクション三部作の完結編。ますます強烈(いろいろな意味で)な、人外そして人間も、篁の周囲に次々登場。ときに主役の座を脅かされ(?)つつ、平安の京の闇を切り裂く篁の太刀筋は健在。夜は冥府で官吏をつとめているともささやかれる篁、現世(うつしよ)ではついに参議に。史実も実在の人物も大胆な考察で取り入れ、読みやすい文体で骨太アクションと妖しき幻惑の世界をテンポよく描く。濃密なのに文章はくどくないので、世界に入りやすく楽しめる。秋の夜長、平安初期の妖美な世界にひたってみてはいかがでしょうか。