小野篁のあやかし冒険譚、ひとまずこれにて。

あの男は、あやかしが見えるらしい…。平安初期、そんな噂から始まった、小野篁(たかむら)の伝奇アクション三部作の完結編。ますます強烈(いろいろな意味で)な、人外そして人間も、篁の周囲に次々登場。ときに主役の座を脅かされ(?)つつ、平安の京の闇を切り裂く篁の太刀筋は健在。夜は冥府で官吏をつとめているともささやかれる篁、現世(うつしよ)ではついに参議に。史実も実在の人物も大胆な考察で取り入れ、読みやすい文体で骨太アクションと妖しき幻惑の世界をテンポよく描く。濃密なのに文章はくどくないので、世界に入りやすく楽しめる。秋の夜長、平安初期の妖美な世界にひたってみてはいかがでしょうか。

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