侵略 侵略者②
牧太 十里
一 捕獲
俺と巌鉄は神殿の広場が終わる門柱まで歩き、異変に気づいた。巌鉄の岩窟住居の周囲を、巌鉄と同じ体躯の重装備したヒューマノイドがうろついている。
「あれはディノス(ディノサウロイド)だ・・・」
「ヒューマ(ヒューマン)だろう。この地域にディノスはいないはずだぞ。あいつの足を見ろ。踵が地面についてる。あんなことができるディノスはいないぞ。獣脚族なら爪先で歩く。踵は地につけないぞ」
巌鉄は俺の言い分を認めない。
「それは進化前の獣脚類だ。デロス帝国の進化したディノスは踵を地につける」
俺は巌鉄の先入観念を崩してやった。
「顔は俺たちに似てるぞ。俺の家の周りで何をしてるんだべ?」
「中を覗いて、巌鉄の女房を見てるんだろう。いい女だからな」
「脅かすんじゃねえぞ。娶ったばかりだ、腹ん中にゃ子もいるんだ」
「おお、やったな。お前が片っ端から戦士と決闘して、負けたヒューマを食っちまったから、若い男は俺とお前だけになった。食っちまった戦士の家族の面倒を見てるんに、よく女房を妊ませる暇があったな。男が産まれることを期待してる」
「ああ。決闘で敗者を食った分は子種で返してる。
そんな事より、あいつ、ただ家ん中を覗いてるだけじゃねえぞ。あの装備、戦闘用じゃねえな。何だベ?」
「観測機器だな・・・」
巌鉄の岩窟住居を覗いているディノスの装備はスコープと探知ビーム照射器、スカウターだ。パルスガンは護身用だろう。パルスガンの他に大型レーザーナイフ、超小型ミサイルまで装備している。
「デロス帝国の地質調査隊のハグレか?」
「それが一番有力だ・・・」
我々ヒューマが住んでいるはここは、かつてジンバブエと呼ばれた、惑星ガイアのアフリカ大陸南東部だ。アフリカ大陸の他の大陸には、ヒューマの他に人獣が棲息している。人獣と呼ぶが、人獣は菜食に近い食生活で凶暴ではない。ディノスやヒューマまでも食ってしまう雑食のヒューマの方が遥かに凶暴だろう。
かつての惑星ガイアに、ディノスはいなかった。
ディノス居住宙域は、
オリオン渦状腕外縁部テレス星団のオーレン星系惑星キトラのキトラ帝国、
オリオン渦状腕深淵部デロス星系惑星ダイナスのデロス帝国、
オリオン渦状腕深淵部グリーズ星系主惑星グリーゼのグリーゼ国家連邦共和国の一国家リブライト星系散開惑星リブランのリブラン王国(散開惑星リブラン、リブラン2、リブラン3、リブラン小惑星帯)だけだった。
「そんな事より、あいつをどうする?」
俺と巌鉄は神殿の広場が終わる門柱の陰から、巌鉄の岩窟住居を覗いているディノスを監視した。
「剣でいっきに片づけるか?」
巌鉄の剣はレーザーパルスを発する。シールドを張らねばこの剣のレーザーパルスを防ぎ切れない。今、巌鉄の岩窟住居を覗いているディノスの装備に、シールド発生装置が装備されているか不明だ。
そう思っている間に、巌鉄の口から涎が垂れた。
「巌鉄はディノスを食う気か?」
「食うかどうかはディノスを捕獲してからだ。そんな事より、奴が俺の家を覗き見してるのが気にくわねえんだ」
そう言うや否や巌鉄は腰に帯びている剣を抜いて走り、ディノスに飛びかかった。
ディノスは直ちに装備に手を触れ、シールドを張って腰の大型レーザーナイフを抜き、巌鉄の斬撃を弾き返した。巌鉄は岩窟住居の壁に弾き飛ばされ、石の壁で頭を打ってた倒れた。体力的には、このディノスと巌鉄は互角だろうが、巌鉄は筋肉より脂肪の量が勝っていた。
「太りすぎだぞ。ヒューマよ・・・」
ディノスがそう呟き、一瞬、警戒が緩んだ。俺は静かにディノスの背後へ近寄り、石でディノスを殴り倒した。
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