八 死闘の末
だが、レーザーパルスを発する俺の剣の鋒は、轟音とともに負弦の後頭部から弾き返された。
負弦が振り返った。大型レーザーナイフを持っている。いつのまにか負弦は地質学者の装備を身に着けてシールド発生装置を起動させていた。
「私たちの地質調査には危険は付き物です。危険が人為的であろうと、天然であろうと、この装備の電脳意識は的確に判断します」
そう言うや、負弦は大型レーザーナイフを俺に斬りつけた。
俺の剣が大型レーザーナイフを弾き返した。
俺は返す剣の鋒で、負弦が装着している装備の中枢・側頭部のスカウターに最大出力のレーザーパルスを放った。
負弦は、俺が放ったレーザーパルスを、いとも簡単に大型レーザーナイフで弾き返した。
妙だ?人であろうとディノスであろうと、剣から放った光速のレーザーパススを弾き返せるはずがない。もしかして俺の考えが読まれているのか・・・。
そう思った途端、負弦が笑った。
同時に、俺の脳裏に負弦の意志が現われた。
『お前の考えは筒抜けだ。何をしようと、私を抹殺できない。
抹殺されるのは、知りすぎたお前だ・・・』
それまでの負弦の言葉と違い、負弦の意志は俺の心に残忍に響いた。そして、大型レーザーナイフの出力を最大に切り換える負弦の意志が現われた。
俺は心の思考(無意識領域の思考)で、リストバンドの時計に付随したシールド盾を起動して負弦に向けた。
同時に、負弦の大型レーザーナイフから放たれたレーザーパルスが、俺のシールド盾に弾かれて、紅い閃光となって飛び散った。
一瞬、驚いた負弦の思考が止まった。驚きのあまり言葉を無くした状態だ。俺たちヒューマは原始的な武器しか持っていないはずだと高を括っていた負弦の意識が見え隠れしている。
思考で俺の心に語りかけた負弦だ。俺の心を知る由も無かったと驚くことはない・・・。
俺は心の思考で剣のレーザーパルス出力を最大にし、負弦のスカウターにレーザーパルスを放つと見せかけ、渾身の力を込めて大型レーザーナイフを持っている負弦の腕を薙いだ。
凄まじい絶叫とともに、大型レーザーナイフを握る負弦の両腕が、シールド内に跳んだ。俺の放った剣の斬撃は、シールドという鎧をまとった両腕から、鎧を叩き潰して鎧ごと肘から先を引き千切っていた。シールドという鎧はすでに元通りに復旧しているが・・・。
負弦は心の思考で意志を俺に伝えた。俺が心の思考で話せば負弦は他のディノスに俺たちの力を知らせるだろう。それをさせてはならない・・・。
俺は言葉で伝えた。
「抹殺されるのは、知りすぎた俺か?」
腕を斬り跳ばされた負弦はシールド内で呻いている。
すると、負弦を包んでいるシールドが、千切れた腕に集って腕の切り口をシールドで包んだ。
同時に、負弦の身体が人からディノスに変わった。
『両腕を斬り跳ばされた衝撃で、融合していたディノスの細胞が人の細胞を駆逐した。もはや、人の姿に戻らぬ・・・』
負弦は捕獲した時と同じディノスの姿に変身し、その場に倒れた。
「神場!」
俺は巨大電脳意識・神場を呼んだ。
「細胞融合のポテンシャルが、ヒューマ細胞からディノス細胞へポテンシャル障壁を越えたのです。ディノスを食して、意識と精神がディノスになっていたヒューマは、全てディノスに変身しました。今後、ディノスは細胞融合できません。
ディノスを4D映像探査した結果、侵攻地域が判明しました」
神場は4D映像探査で、ディノスの侵攻状況を分析した。
俺は、『今後、ディノスは細胞融合できない』と言う、神場の説明を聞きたかった。
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