留学ハプニングエッセイ3〜情報セキュリティに気をつけろ!

佐倉奈津(蜜柑桜)

情報漏洩

 こんにちは。佐倉奈津こと蜜柑桜です。普段は長編ファンタジーを書いています……が、本日は私のドイツ語を駆使して生きた留学時のありえないハプニング第三弾をお送りいたします。


 当時のわたくし、日本のスマートフォンを持っておりませんでした。海外渡航の時には(確か叔父からお下がりか何かでもらった)iPod touchという、今はもはやないだろうデバイスを使っていました(調べたらありました。すみません)。その頃も相当な古いものだったアレです。

 こちら、通話機能がないだけでiPhoneとほぼ変わらなかったので、日本の友人とのSNSやメールなどはこれで十分だったのですね。十分、つまり個人情報がふんだんに入っているわけです。


 ある日のわたくし。図書館からトラムに乗ってアパートへ帰ります。まだ5時くらいでしたでしょうが、ヨーロッパの夜は早い。もう日も暮れて、寒いし疲れたし。トラムは座れなかったし。出口付近の広いところに立ちながら、iPodをぽちぽちしていました。街の色んなところに大学の機関が入っているのか、トラムに乗りつつ割と頻繁に大学のWi-Fiに繋げたんです。

 そして私の降りる駅。何かメールを打っていたかどうかしていて、あ、もう降りなきゃ、と大急ぎでトートバッグにipodを滑り落としながら、ドアのところに立っていた中東系の方々の間を抜けました。

 鞄に滑り落としたつもりだったのです。


 いつもなら貴重品を入れた鍵付きショルダーバッグに入れているiPodですから、トートから入れ直さなきゃと鞄に手を突っ込む蜜柑桜。


 無い。


 え。


 血の気が引きました。


 古いとはいえ、こちらでも売りに出せばお金にはなるでしょう。もしかして出る時にすられた?(中東系の方々の面構えは良くはなかった)えっ?! 嘘でしょ。

 鞄をどうひっくり返しても、コートのポケットを探してもありません。

 これはまずい!!


 売られなくても中には大量の個人情報。しかも操作中だったから画面のロックも外れていた気がします。さらに最悪なことに、降りた時にはWi-Fiが切れていたのでデバイスの位置情報探知機能もききません。


 順序を覚えていませんが、できうる限りの対策を即時取ります。

 家に帰ってパソコンを立ち上げカード系その他重要なアカウントの暗証番号を全て変更、位置情報がやはり分からないのを確認の上、トラムにとって返す。来たトラムに飛び乗り、終点駅まで。

「すみません、こちらに遺失物ないでしょうか!」

 あるわけないと思いながら必死ですよ。ありませんでしたよ。


 もう、あらゆる手を尽くしましたよね。このiPad、情報云々がなくても移動中にメール処理したり何かメモしたり、兎角重要なツール。無くなったら学生生活留学生活のうえでかなり困るわけです。しかも買うなら高い(とにかく貧乏でここ重要)。


 というわけで今度は警察署だ! 派出所のお巡りさんじゃありません。地域の警察署まで行きます。とっぷり暮れた中を人通り少ないところに立つ警察署まで泣きたくなりながら急行。

「トラムでなくなって落としただけなのか盗まれたのかも分からなくて、画面ロックも不安なのですけれど、見つかったら連絡をください!」

「うん、分かりました。それじゃこれに連絡先と名前と失くした場所と書いてね。時間はどのくらい?」

 うんうん、と優しく聞いてくださった方はカクトモさんの薮坂さんのようにお優しかったよ……今思えば忙しい中でパニック学生がつまらないポカでごめんなさい。


 もうあたりも暗くて一人で歩くのは嫌な時間。治安がいいので心配は無いですが、好んで歩きたい場所でもありません。外でできることは済みました。

 あとは日本だ!

 こんな時にはりんご会社のサポートページです。些細を調べてみると、少なくとも当時はシリアル番号が分かれば盗難悪用対策を取って貰える!

 ということでシリアル番号です。そんなもん暗記している訳がない。書いてあるの本体だって!

 しかしここで諦めてはいけません。

 シリアル番号は梱包の箱かその中の用紙のどちらかにもあったはず。

 そして蜜柑桜、それ系のものは取っておく人間です。

 極力実家には頼みたく無いけれど、実家に連絡っ! メール!

「ごめんiPod紛失して、中に個人情報すごいからAppleに連絡したいのでシリアル番号調べたいの」

 時差がもどかしい。でもとにかく家族に頼るしかないのです。

「私の机のどこそこに取扱説明書の整理してある箱があるからその中みて」

「もしくは引き出しの何番目のどこそこにiPodの箱があると思うからそれを」

 蜜柑桜、自室の机周り整理は姉母と比べると大変良いと自他共に認めるところ。

 早速母と姉が調べてくれ、それっぽい番号を送ってくれましたが……リンゴ社。

「そちらの番号では無いみたいですねえ」

 みたいなのを数回繰り返し、結局のところiPodそのものの居場所わからずその後知れず………

 まあ、取り敢えず幸なるかな恐れていたカード悪用もなく、他に事件もなく……

 まあ単に落としただけなのでしょう。

 協力者の姉と母に感謝です。

「ごめんねぇありがとう」

 web電話をしながらお礼と謝罪。向こうはやや笑いながらです。まあ仕方ないよねって感じでしょうか。

「悪いけど、机の中ぐちゃぐちゃにしちゃったからね」

「あーいいよそれは仕方ない」

 協力してもらったので文句言えませんよね。笑ってるし忙しいのに怒ってなくてよかった。感謝せね……

「なんか色々見つけちゃったぁ」

「ねぇー」

 笑っ……

 え!!


 血の気が引きました。


 なぜかってその机、その引き出しには。

 その引き出しには。


 部活の時にいただいた先輩たちからの手紙が(青春真っ盛りで結構恥ずかしい)!


 いや、それならまだ女子校のノリで笑って片付けられる。

 それよりもっとまずい情報がある!

 一番家族に漏洩してはいけない極秘情報がある!




 留学前にお別れしてきた元彼が、誕生日プレゼントにつけてきた手紙ー!!




 留学生の皆様に、間抜けな先輩から経験に基づいた助言です。

 極秘情報のセキュリティは厳重にかけるか、身辺整理をしてから渡航してください。

 海を渡ったらもう手遅れです。



 その他のカクヨムコン留学エッセイなどはこちらです。

 https://kakuyomu.jp/users/Mican-Sakura/collections/16817330668308734866

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

留学ハプニングエッセイ3〜情報セキュリティに気をつけろ! 佐倉奈津(蜜柑桜) @Mican-Sakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ