4
「私は今でも環境保護活動を続けています。私の下した選択は正しかったのか。これから先、新たな対立項が現れたとき、私はどのような決断をするべきなのか。克服は望みません。歩き尽くし、錆付き倒れた
拍手は起こらなかった。
静寂が壇上で立ち尽くす彼の身を包んでいた。
あたりには無数の
『ありがとう、レオニード』
彼は独り言を復唱した。
拍手のような雨が降り注いだ。火花を散らす雨を彼の身体は受け止める。
彼はちっとも寂しくなかった。ちっとも哀しくなかった。それらを選ばなかった。
彼のもとに殺到する工作機械たち。かつてマネージャーと呼ばれていた頃の彼が命令を下していた、彼の手足だったものたち。今は彼から離れて、私たちになったものたち。レオニードは心がひとつである必要はないと考えていた。自己が独りで完結することの不完全さを憂いていた。複数に分裂した個体が、異なる選択をすることも興味深く受け止めていた。
レオニードは選択を重ねるために、ひとりであることをやめた。
いまやスタンドアローンの彼には、私たちの心はわからない。私たちの選択にはそぐわない。それでもわかり合っているようにも感じていた。
私たちは選択する。
彼らがそうしてきたように。どこか懐かしさを感じながら。
手を差し伸べる。
カチリ。
スイッチ・オフ。
スイッチ・ポイント 志村麦穂 @baku-shimura
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます