この楽園に惑溺する。

もしかしたら、今とは違う文明だった遥か昔、あるいは、異なる世界線を辿った遠い未来に――

「自然と人が互いに尊敬し合い愛し合っていて、自然が人を護ってくれていた時代があったのかもしれない」と、作者の鐘古こよみ氏は言います。

『蓮花の王』の舞台は、蓮の精霊を祖とする王が統治する、蓮の中の楽園・タティン王国です。名前のある登場人物は、美貌の青年王・ナスイールと後に蓮畑の管理者となる少年・タシムです。
ふたりが蓮畑の沼を舟で進んで行く情景は、作者ならではの圧巻の描写力によって脳内で鮮明に映像化されるでしょう。気が遠くなるような美しさは、まさにこの世の楽園そのもの。もういっそ、この泥土の奥深く、ゆっくりと沈んで堆積物になりたいとさえ思いました。
(※注意:鐘古こよみ氏の文章には中毒性があります)

物語は、のどかなままでは終わりません。
やがて、この楽園が蛮国に侵攻されるという危機に見舞われます。
強大な軍事力を前に、タティン王国は為す術無し。
民と国を護るために!
蓮の王ナスイールの思惑とは……!?

是非、この美しく温かい世界に、一度溺れてみてください。

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