第2話 佐倉さん
部活が終わってからの帰り道にラケットを抱えてへとへとで乗った電車の中で、何回も佐倉さんを見かけた。
中学の頃は同じ部活だった佐倉さんが、通っている女子高で部活に入っているかどうかさえ知らない。
朝と夜の電車の中、たまに会えた時はめちゃめちゃ嬉しかった。どんなに疲れているときでも、遠くからひと目見れるだけで元気が出た。
ショートボブだった中学の時から髪を伸ばし、見かける度に大人びてキレイになっていく佐倉さんは、いつのまにか挨拶さえできないくらいに眩しくなってた。
だけど、話をしなくってもあのフワフワとした優しい雰囲気は昔のままのように見えた。
いや、そう思いたかっただけなのかもしれない。
だから時々、電車の中で友達と笑顔で話す姿を見て『中学の時と何も変わってないんだ!』って決めつけては、ホッとしてた。
たまに男子と電車に乗るのを見かけた時だけは、いつもより扉一つ分だけ近づいては、彼氏じゃありませんようにって祈りながら見てた。でも男子のだいたいは、近すぎず遠すぎずの距離で会話してて、勝手に安心してた。
馬鹿だよな、俺。
何もしないくせに、いつも通りの片想いが明日もあさっても続くって安心してた。
ほんっとうに馬鹿だよな。
だから。
だから、結局。
こんなくだらない事してんのは、自分のせいだろ?
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