月に手を伸ばした日 ~二つの片想い~

マクスウェルの仔猫

第1話 ここはどこなんだろう

 ここはどこなんだろう。


 もうどれくらい、歩いて走った?


 未だに満月を見上げる自分に、呆れるしかない。


 あれは。

 あの光景は。


 佐倉さんに、何もしてこなかった俺に対する答え。


 それはそうだろう。


 言葉に出さずに、気持ちを伝えずに叶う恋なんてあるはずがない。


 そんな事に夢を見ていた俺は、物語のような展開に胸を躍らせて……当たり前のように恋の終わりを迎えた。

 

 それは全部、俺のせいだ。


 こんな蒸し暑い梅雨の雨上がりの夜に、馬鹿みたいに走っても。


 何も起きるはずがないのに。

 何も、変えられないのに。


 

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