第3話 絶対そうだ。

 でも、今日は違った。


 帰りの電車で佐倉さんとイケメンの男子が一緒にいるところを見て嫌な予感がした。体が震えたもんな。


 見たことがない私服姿の男子は、年上っぽかった。もしかしたら大学生なのかもしれない。




 あれ、彼氏だ。

 絶対そうだ。

 そう思えてしまったんだ。



 座り込みそうになるのを、つり革で支えた。鷲摑みをされたように、心臓が苦しかった。




 見ないと。

 見たくない。


 見ちゃダメだ。

 見なきゃダメだ。




 震えながら、佐倉さん達をもう一度見た。

 

 いつのまにか恋人つなぎしてた手。

 後の、二人の密着感。

 佐倉さんの、あの幸せそうな笑顔。 



 そして、次の瞬間。











 電車の中で、路チューしてんじゃねえよ。











 いたたまれなくて、そっこーで降りた。


 ずっと走っては歩いてる。

 ずっと歩いては走って、叫んでる。

 たまに転んでは、見上げてる。


 あの月は佐倉さんだ。

 

 もしかしたら。

 手が届いたら。

 たどり着けたら。


 そう思ってる自分が馬鹿らしい。


 でも、歩き続けてる。

 まだ、走り続けてる。

 今も、叫んでる。

 見上げてる。


 なあ。


 どうしたらあの月に届いた?

 佐倉さんが俺だけに向ける笑顔を見れた?


 はは、何言ってんだ俺。

 答えなんかわかりきってる。


 夢見てただけで何にもしなかったからだ。


 はは。

 ははは……。


 ばっかじゃねえの、俺!

 ムッカつく!!!


「うおおおおおおおおおおっ!!」


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