第7話 言っちゃダメなヤツだ!
「……そんな事があったんだ」
「ああ、見事に撃沈しちまった。ははは」
「それでここまで走ってきたと。驚きだよ。
「はは、笑っちゃうよな」
「あはは……」
なるべく感情的にならないように、間違っても泣いたりしないように淡々と説明した。途中で危うく泣きそうになったけど、頑張った。
だってこいつ、一生懸命聞いてくれるんだもの。
話し方以外は、昔と全然変わってない。
「俺が馬鹿だったんだよ」
「何で?」
「心のどっかで、いつかチャンスが来て佐倉さんと付き合えるんじゃないかって勝手な夢を見てた。何も……何もしなかったくせにっ!」
「上村君……」
我慢してた事が、言いたかった事が、悔しさが、悲しさが、情けなさが、次から次へと心の奥から浮かんでくる。
「こんなに泣くなら、悲しいなら! 自分でどっかできっかけ作ってワンチャン狙って告ってればよかったじゃねえか! こんなになってから泣いて後悔するなんて……」
また、涙が溢れてくる。
情けない。
みっともない。
いくらなんでも篠原だって、自分が悪いのに後悔してヤケになって泣いてる俺に呆れてるだろう。
でも、止まんないんだ。
悲しさが、悔しさが、涙が止まんないんだよ。
「……ツラかったね。何でも聞くから吐き出しちゃいなよ」
こんな姿、誰にも見せたくなかったのに! と思っても、肩に置かれた手と言葉の温かさに、なおさら涙が止まらなくなる。
「でもさ……ずっとずっと……好きだったんだ。本気だったんだ」
「……うん、知ってる」
「佐倉さんの笑顔が、優しさが好きだった」
「うん」
「好きって言えなくても、佐倉さんにいつか振り向いてもらえる自分になれるように頑張ってたんだ……!」
「…………わかるよ」
わかるよ。
その言葉に、カチンときた。
モヤモヤが止まらない。
でもやめろ!
ダメだ!
優しく聞いてくれている篠原に、言っちゃダメなヤツだ!
「……お前に何がわかるんだよ!」
びくり。
篠原の手の動きが止まった。肩をさすってくれてた手が、ゆっくりと離れていく。
俺、最低だ……。
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