第4話 犯人と犯行の真相
後日、トースターを挟み込むように付着していた指紋が見つかり、照合された。その指紋は
証拠を提示された萩沼は反論した。
「俺は犯人じゃない。俺は昔、美智代の家で同居していたんだ。そのとき偶然付いたに違いない」
だが、その反論は警察も予期していたものだった。現場にあったトースターは、事件前日に購入された新品だと茅森桃がすでに証言している。萩沼が触れるはずがないのだ。
そこまで指摘されると、萩沼はすべての犯行を自供した。
なぜ美智代は萩沼の顔を知っているのに、名前が分からなかったのか。それは、萩沼が泥棒として侵入したからだった。覆面を着用していたらしい。
目的は、美智代に渡した婚約指輪だった。高価なダイヤモンドが付いていて、取り返したかったそうだ。
美智代が家の電気を消して昼寝していたのを、萩沼は留守だと勘違いしたという。
玄関の鍵が開いていたので難なく侵入。彼は家の電気をつけた。
すると、美智代が電気がついたのに反応して目を覚ます。彼女はその時「桃? お帰りー」と言ったそうだが、留守だと思っていた萩沼はその声に仰天した。
萩沼は逃げようとしたが、美智代は桃を迎えるために玄関にやってくる。そこで彼女は萩沼と鉢合わせした。
美智代は恐怖に怯えながら家の奥へと逃げる。「逃げられたらまずい」と感じた萩沼は、家の最奥にあるキッチンへと美智代を追い込み、近くにあったトースターで前から殴りつけた。
美智代が倒れたのを見て、今度は萩沼が恐怖する。
「殺してしまったかもしれない」
事態が発覚するのを恐れた萩沼は、トースターを元の位置に戻して慌てて逃走する。
そういう流れだった。
しかし、萩沼が殴りつけた時点では美智代はかろうじて生きていた。その瀕死の状態で、近くにあったカタカナを使って、トースターの指紋を警察に照合させようとした。
萩沼は犯行当時、手袋をしていなかった。それは、彼は過去に美智代の家で同居していたので、指紋が家に付いていても怪しまれないからだった。彼の指紋が玄関やら婚約指輪がしまってある物置やらに付いていても、何の問題もなかったのだ。
しかし、トースターだけは違った。
茅森美智代の最期の『スタート』が、事件をゴールへと導いた。
(了)
推理のスタートは『スタート』 天野 純一 @kouyadoufu999
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます