一笑傾天
白玖黎
一笑傾天
その昔、中原に天下
女は貴族の出ではなく、
国中の誰もが女の容貌に思いを
女は良く受け答えをし、加えて
洗練された立ち居振る舞いは、
著名な詩人は国を傾けるほどの美と称した。
さらにその
しかし、ひとつだけ話とは違うところがあった。女は決して人に笑いかけることはなかった。
大商人にも、貴族の子息にも、画伯や詩人にも、国主である皇帝にさえも。
だが、そんな
むしろ誰がどのようにしてこの女を笑わせることができるだろうか、と女への注目は炎の如く燃え盛った。
その勢いは、
あるとき、女は気まぐれにこんなことを言った。
わたくしの望むものをくださった
その言葉に国中が色めき立ち、女の
ある者は、まばゆいばかりの黄金珠玉を。
ある者は、国を
またある者は、広大な土地や千里を駆ける馬、異国の珍しい
それからしばらくと経たないうちに、国が崩壊の危機に直面する。
その日は奇しくも、宮廷で女の生誕を祝う
国中がお祭り騒ぎのなか、狙いをすましたように天から大勢の
神々の兵士は華麗な剣さばきで瞬く間に宮殿を包囲し、都を
雲海の狭間から降り落ちた
民は皆、天の怒りに身を
誰もがこれは罰なのだろうと悟った。
たったひとりの、取るに足らない人間の女に惑わされる皇帝、民、そして国への真っ当な
変わり果てた都を見下ろし、城壁の上に立ち尽くす女の前に、天から光り輝く蛇体が伸びてきた。
七色に
「主は
いつしか女の噂は天の龍神の元にも届いていたらしい。
龍神は何者にも
さながら戦場に咲く
「しかし、主はやはり笑わぬのだな。我を見ても驚きもせぬ」
黄金の
一国を滅亡させたからには、やはり、天下随一の笑みというものを見ておきたかった。
「恐れながら、お願いしたき
「構わん、申してみよ」
「どうか、どうかこの顔を
女の話を聞き終えると、龍神はたちまち長いひげを震わせ、大口を開けて
「ならぬ! それだけは許さぬ。都での暮らしが気に入らぬなら、離宮を建てればよいだろう。諸国に攻め入り、領地を広げ、気に入る土地を探せばよい。地上で見つからないのなら、天上を探せばよい。なに、天を傾けることなど、神仙ともあろう我にとっては容易いことだ。それに、我の伴侶となったのならば、もう言い寄られはせぬ。そのような罰当たりは、すぐさま
一笑傾天 白玖黎 @Baijiuli1212
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