ミニ外伝──The Royal brothers

ミニ外伝──The Royal brothers

『レオン、クリストフ──あの子たちと遊んではダメよ。あなたたちは正統な王位継承者なんですからね』



「──って、言われてもなぁ……」



 昼下がり──

 九歳のレオン少年は、マリアンヌ王妃ははの言いつけを思い出してぼやいた。

 城の中二階にあるバルコニー。瀟洒しょうしゃなテーブルセットの向こう側で、レオンと同じ金髪蒼眼の子ども──ふたつ年下のクリストフが読書にいそしんでいる。


 優美なをを描く手すりの向こう側──

 春先の中庭には色とりどりのバラが咲いて、レオンたちのいる中二階にまでかぐわしい香りを運んでくる。花々の間を行き交う蝶たちがのどかに舞い踊る中、日傘をさした貴婦人が微笑んでいるのが見える。彼女が見守るふたりの子どもたちを見て、レオンも目を細めた。


 褐色かっしょくの肌に、やわらかな黒髪──この春で二歳になる双子の弟妹きょうだいが、中庭で無邪気に遊んでいる。



「くっ! かわいい……! 天使か……」


「兄さん、そんなにガン見してたらバレるよ。あっちの母さまもぼくたちがちかづくの、よく思ってないんだし」


「……む……」



 そういうクリストフもさっきからページが進んでない。腹違いの弟妹きょうだいたちの方をチラチラ見ているのが丸わかりだった。

 そんな弟の様子に、レオンも苦笑した。



「……よし。あいつらがおっきくなったら、いっぱい遊んでやる」


「でも、母上はあそんじゃダメって……」


「そんなの大人のつごうだろ? オレたちに関係あるか」


「……え……」



 まるっきり実母ははの言いつけを破る兄の言葉に、クリストフが目を丸くする。

 レオンは胸を反らした。



「母親が違かろうと、目やかみの色が違かろうと関係ない。だれがなんと言おうと、あいつらはオレたちの弟と妹だ。だから、あいつらがおっきくなって、こっそり出かけられるようになったら、いっぱい遊んでやる。母上がなんて言おうとだ!」


「……。そのころにはうざがられてる気がするけど……」


「クリストフ、てめ……っ。どこでそんな言葉おぼえた」


「兄さんもでしょ」



 中庭にいる双子たちを見やる。手と足が一緒に動いているような挙動がかわいらしい。そんな時期に、一緒に遊んでやれないのは残念な気もするが……。



「いつかいっしょに遊ぼうな──エヴァンダール、カトリーナ」



 ぽつりとつぶやいて、レオンは微笑む。

 バルコニーに吹くそよ風が、レオンとクリストフの金の髪を優しく掻き混ぜた。



(『葬送のレクイエムⅡ』ミニ外伝──了)




(※ご愛読、本当にありがとうございました!!またいつか『葬送のレクイエムⅢ──偽りの聖女と白き魔女(仮)』にて(*´ω`*))

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葬送のレクイエムⅡ──不死鳥の巫女と殲滅のつるぎ 深月(みづき) @yuki-tsubasa

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