第50話 新たなる刺客

「静」


 練習試合が終わり、みとちゃんが声を掛けてきた。

 正直、大差で敗れてしまったので、合わせる顔がない。


「……いいチームね」

「えっ?」

「正直、合同チームって聞いて侮ってたわ。粗削りだけど、いいメンバーがそろってるじゃない」


 そう言って、みとちゃんは梨世たちの方を見つめる。


「バスケを純粋に楽しんでる。あのチームなら、間違いなく上に行けるわよ

「私もそう思ってる。だから、次は負けない」

「ふっ、やれるもんならね」


 お互い拳を交わして、試合後の健闘と称える。


「まっ、せいぜい頑張りなさい。新人戦まで時間ないけど。それじゃ」


 みとちゃんは後ろ手で手を振りながら去っていく。

 私とみとちゃんの間には、確かに元チームメイトとしての絆があったはずだけど、今はそれぞれ別々の道を歩んでいるんだということを改めて実感させられた。


「おーい静。こっち来い!」


 でも、寂しいとか悲しみはもう私にはない。


「うん、今行く!」


 だって。私とって最高の幼馴染りかいしゃがコーチになってくれたから。



 ◇◇◇



 一日休みを挟んだ次の日。

 俺達は再び地区センターのコートへと集まっていた。


「あれっ、亜美はどうした?」


 コートに集まっているのは五人だけ。

 亜美の姿は見受けられない。


「ちょっと電車が遅れてるみたいな話は聞きました」

「そうか、ならまあ時期に来るだろう」


 俺は全員を一瞥してから次なる目標を提示する。


「よしっ、まずは八月の下旬に行われる新人戦が当分の目標になる。浮島高校との練習試合を通じて、今の現在地が分かっただろ? まずはここで初戦勝利を収める事。

 これが俺達の目標だ。浮島高校みたいなチームと当たる可能性も考えながら、柔軟な練習メニューを組んでいくつもりだから、しっかり着いてくるように!」

「はい!」

「ご、ごめんなさい遅くなりました……」

「遅いぞ亜美」

「ご、ごめんなさい。電車が遅れてしまいまして」

「まあ、それは仕方ないことだから、練習着に着替えて」

「はぃぃぃ……」


 最寄りの駅から地区センターまで歩いてきたのか、亜美はヘロヘロになりながら更衣室へと向かっていく。


「それじゃ、時間も限られてるから練習を――」

「ちょっと待ったぁー!!」


 とこそで、体育館の入り口の方から、大きな声が響き渡る。

 何だと思って振り返れば、そこにはツインテールの小柄な少女が立っていた。


「私も練習に混ぜなさい!」


 唐突に練習参加を申し出るツインテール少女。

 練習着姿に着替えており、やる気は万全と言った様子で腰に手を当てながら高らかに宣言したのである。

 合同チームが始動して一週間、まだまだ嵐の予感がプンプン漂っているのであった。

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怪我で選手生命を終えた俺が、女子バスケ部のコーチとしてマネジメントしてみたら さばりん @c_sabarin

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