第070話 救助
「なんなの、あなたたちは。私の邪魔をしないで」
高価そうな白のドレスアーマーを着た、キリリとした金髪碧眼の美少女が苛立った顔で男たちを睨みつける。
年頃は俺より少し上かもしれない。16~18くらいだと思う。
彼女が連れているモンスターは大きな白い虎型のCランクモンスター、ホワイトタイガーだ。Cランクモンスターの中でも強い攻撃力を持っていて、近接戦闘力なら上位に入る。
普通なら男たちが何人いたところで少女に敵うはずがない。
「おいおい、お嬢さん。いかにも金持ちそうな格好でこんな所に1人できたらダメだってお父さんとお母さんに教わらなかったのか?」
しかし、リーダー格の男がへらへらとバカにするような態度で語り掛け、仲間たちが同調するようにケラケラと笑った。
恰好から察するに俺の同業者だろう。
街にいる傭兵たちと違い、こっちの集落にいる傭兵たちはガラが悪い。現に俺も絡まれたしな。
治安が悪いとは思っていたけど、まさか多人数で女の子を囲むようなことをする奴らがいるとは思わなかった。
男の言葉を信じるのなら、奴らの目的は金なんだろうな。
「これ以上邪魔をするなら容赦しないわよ?」
「どう容赦しないって言うんだ?」
少女は剣を抜いて構えて相手を威圧しても、男たちは全く気にしていない。
「痛い目をみせてあげるわ。イーリン、行くわよ!!」
「グォオオオオンッ」
少女とイーリンと呼ばれたホワイトタイガーが男たちに襲い掛かる。
――ガキンッ
しかし、少女の攻撃は男の短剣に受け止められてしまった。
「な!?」
「へへっ。そんな攻撃は効かないなぁ。お嬢さん」
Cランクモンスターを連れているテイマーはそう多くない。
少女は今まで自分の攻撃を受け止められたことがなかったのだろう。
少なくとも傭兵には。
そして、男の後ろから2体のモンスターがゆっくりと近づいてくる。
それは俺がシルバー峡谷で初めて出逢ったCランクモンスターと、Dランクモンスターのダイヤウルフだ。
まさかあんな柄の悪い奴がCランクモンスターとDランクモンスターを一体ずつテイムできるとは……世の中本当に分からないもんだな。
Cランクモンスター1体とCランクモンスターとDランクモンスターの2体ではそう違いは無さそうに見えるけど、受ける恩恵は大きく変わる。
鍛えているのなら猶更だ。
テイムしたモンスターと、短剣を使っているところを見ると、あのリーダーはスピードに自信がありそうだ。
「くっ」
少女は表情を歪めながら剣を弾いて距離を取る。
「おっと、逃がさないぜ」
男はすぐに追いかけて距離を詰めた。
やはり俺が睨んだ通りだ。
「グォオオッ」
「アンガス、ブルガー、押さえろ」
「ガァッ」
「ウォンッ!!」
ルーインが行く手を阻もうとしたけど、リーダーのモンスターによって阻止された。
「はっ!!」
「くぅっ!!」
男の短剣が美少女に襲い掛かる。少女は苦悶の表情を浮かべながらどうにか受け止めた。
「ここに世間知らずの金持ちの娘が一人で来るとどういう目に遭うか教えてやるよ」
「ふんっ。できるものならやってみなさいよ」
纏わりつくような視線で舌なめずりをする男に、美少女は苦戦しながらも挑発するように笑った。
「へへへっ。反抗的だな。いいねぇ。でも、何時までその態度が持つかな?」
少女の反応を見て気持ちを昂らせる男。さらに攻撃のスピードを上げていく。
少女は防御するので手一杯になり、服が斬り裂かれた。
このままだとやられてしまうだろう。いつまでも見ているだけって言うのは良くないよな。
男たちの戦力分析が終わったので動き出す。
俺は注目を集めるためと、少女を警戒させないために、インビジブルを解いて、とり囲んでいる男の1人の後頭部を殴り飛ばした。
「ぐわぁああああああっ!!」
男は前のめりに吹っ飛んで動かなくなる。
「何者だ!?」
「一体いつの間に!?」
「全く気づかなかったぞ!?」
それを見た男たちが慌て始めた。
さっきまで誰もいなかったはずの場所に突然、よく知らない男が現れて、仲間が倒されたら、そりゃあ混乱もするよな。
「ぐぺっ」
「がはっ」
「ぐぇっ」
その混乱に乗じて俺はさらに攻撃を続け、男たちを気絶させていく。
「はぁっ!!」
周りの騒ぎに気を取られたリーダー格の男に少女が攻撃を仕掛けた。
「ちっ」
男は攻撃を受け流し、距離を取る。
「てめぇ、なにもんだ? なんで俺の邪魔をする」
「女の子が寄ってたかってイジメられてたら助けるだろ、普通」
「ちっ。しょうがねぇ。本気を見せてやる。はぁっ!!」
男のスピードが先ほどまでよりもさらに一段階上がった。
ブラックパンサーがスピードアップの魔法を使えたはずだ。それを使用したんだろう。
しかし、その程度のスピードならどうとでもなる。
俺は男の短剣を躱して思いきり顔を殴りつけた。
「ぐはっ!?」
男は全く反応できずに俺の拳を受けて吹っ飛んだ。
「な、なんで……!?」
まともに入ってせいで、体を起こせない男
自分のスピードについてきたのが信じられずに驚愕している。
「どうでもいいだろ、そんなこと」
「がっ!?」
俺は動けない男に近づいて意識を刈り取った。
「グォオオオンッ!!」
「ウォオオンッ!!」
主人を倒されたモンスターが怒って俺に襲い掛かってきたけど、俺はあっさりと意識を飛ばす。
極力痛めつけないように気をつけた。
「大丈夫か?」
「あなたは何者なの!!」
男たちを全員制圧して様子を窺っていた美少女に近づいたら、助けたはずなのにもの凄く警戒された。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
カドブコンテスト用の新作を公開しております。
現人神(かみ)様のその日暮らし〜異世界から帰ってきたら、二十年経っていて全て失ったけど、神社を貰って悠々自適な現人神様生活を送ることになりました〜
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どうぞよろしくお願いいたします。
最低ランクの雑魚モンスターしかテイムできないせいで退学させられた最弱テイマー、『ブリーダー』能力に目覚め、やがて規格外の神獣や幻獣を従える英雄になる ミポリオン @miporion
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