第069話 目標達成と不穏

 プルーから遅れること数日。


 まず、ルナが進化した。


「クゥウウウウッ!!」


 ―――――――――――――

 個体名:ルナ

 種族 :冰雨ひさめ妖狐

 属性 :氷・妖

 レベル:1/40

 ランク:C

 スキル:ブリザードブレス

     アイシクルレイン

     狐火

 状態 :良好

 進化条件①▼

 進化条件②▼

 ―――――――――――――


 見た目は大きく変わらないが、尻尾が4本になった。


 もっふもふがさらにもっふもふだ。いいか? もっふもふなんだ。これはとても大事なことだ。


 その手触りは最高級の毛布だって敵わない。俺のお気に入りの抱き枕だ。


 フロストブレスがブリザードブレスへと変化して、さらに威力が上がり、相手が一瞬にして動けなくなるほどの氷雪の混じる息を吐く。


 アイシクルレインはアイスニードルよりも大きな氷柱が敵に向かって降りそそぐ魔法だ。


 狐火は青い炎。見た目だけは火のように見える。しかし、その見た目とは裏腹に相手に触れた瞬間、体温を奪い取り、体を内側から凍り付かせてしまう氷の炎だ。


 ルナもDランクの時とは比較にならない程強い力とスキル、そして、もっふもふを手に入れた。


「ご主人様」


 次に、リタが進化に至った。


 ――――――――――――――

 個体名:リタ

 種族 :聖白妖精

 属性 :風・聖

 レベル:1/40

 ランク:C

 スキル:慈雨

     風壁

     浄化 

 状態 :良好

 進化条件①▼

 進化条件②▼

 ――――――――――――――


 見た目年齢は変化せず、まるで神官のような服を身に着け、透明な妖精の羽と、天使のような光輪を持つ不思議な種族へと変化した。


 こんなモンスターは見たことがない。


 俺が学院時代に読んだ図鑑にも出てこなかった。恐らく俺のテイムモンスターの中で一番レアな存在だ。


 慈雨は、祈りの更に上位の支援スキル。


 味方に雨のようなものが降り注ぎ、全ての能力を3割も上昇させてくれる破格のスキルだ。


 風壁は、守りの風よりもさらに強固な風の壁が、俺たちの体の周りにまとわりついて守ってくれる。


 今の俺たちの守りはかなり盤石と言える。


 浄化は、呪いや不浄な存在を祓うスキルで、アンデッド系のモンスターに対してすさまじい効力を発する。また、その副次的な効果として、服や体の汚れを綺麗にしてくれる。移動や野営の多い傭兵にはまるで神のようなスキルだ。


 一家に一人は欲しいよな。


 宗教関係の人たちに見つかったらマズそうな雰囲気を感じるので、よほどのことがなければ牧場に居てもらうのが安心だろう。


 そして、さらに1週間ほどしてアスラが進化に辿り着いた。


「ギャオオオオッ!!」


 ――――――――――――――

 個体名  :アスラ

 種族   :アビスリザード

 属性   :闇

 レベル  :1/40

 ランク  :C

 スキル  :シャドウガイザー

       ブラックブレス

       威圧

 状態   :良好

 進化条件①▼

 進化条件②▼

 ――――――――――――――


 アスラは更にその体を大きくして、体長が2メートル程の大きさになった。


 顔つきも可愛らしいものから凛々しいものへと移り変わり、トカゲというよりもドラゴンと呼んだ方が良さそうだ。


 これくらいの大きさになると、家の中でも動き回るのが厳しくなってくる。その代わりに、背中に乗ることができた。


 ただ、見られるわけにもいかないし、高さが足りないので、アスラに乗っての移動は難しいだろう。


 シャドウガイザーは足下から闇が間欠泉のように噴き出す魔法だ。シャドウエナジーの上位版で、闇の力で体の内側から蝕む。


 ブラックブレスは、黒い炎のブレス。通常のファイヤーブレスとは異なり、触れたものを燃やすと同時に、その生命力も奪ってしまう恐ろしいブレスだ。


 主にドラゴンゾンビと言われる、ドラゴンが死後アンデッド化したモンスターが使用する。


 そして、最後に威圧。


 咆哮で体が竦み、動けなくさせてきたオークキング。あれはスキルではなかったけど、威圧はスキルと認識されるほど顕著に相手を怯えさせ、行動を鈍らせる。


 このスキルがあれば、格下に対して圧倒的に優位に立てるようになるし、奇襲も受けにくくなる。


 アスラは同じ闇属性のクロロが隠密に特化しているのとは違い、破壊力に特化している。不思議なものだ。


 これで俺がテイムしているモンスターは全てCランクになった。


 特殊進化Cランク6匹と通常進化Cランクの代理契約1匹分の力、そしてサーシャの加護によって俺は相当強くなることができた。


 これで一番の目的は達成された。


「ちょっと長く居過ぎたから急いで帰ろう」


 家を空けてもう2週間近く経つ。


 事前に言っていたとはいえ、想定以上に長くなってしまったので、アイリもさぞご立腹のはずだ。


 サイズを変えることができて比較的目立ちにくいプルーと、姿を完全に消すことができるクロを残し、他の皆を育成牧場の厩舎に送って、駆け足で山を降りて行く。


 今の速度なら1日で家まで帰れるかもしれない。


 そう思ってさらに加速した。


 ――キンッキンッ


「ん?」


 しかし、帰り道の途中で明らかに人間同士が争う音が聞こえた。


 もし誰かが襲われているのなら見て見ぬふりはできない。


 俺は進行方向を変えて、音のする方へと向かった。


 複数の人影が見えたので、インビジブルを使って姿を隠して近づき、茂みの影からコッソリと様子を窺う。


 そこでは、モンスターを引き連れた一人の女性が、複数の柄の悪い男たちに囲まれていた。

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