鬼才……奇人……この人を形容するにはなんと言えばいいのだろうか

文章のもつ力がえげつなさすぎる。
それが正直な感想として、そして第一声として紡がれる。
僕なんかも一応は小説投稿なるものをしている身分であるし
それなりに本も読んできたし、特徴のある『自分らしい』
そういう文章を書けているのではないかなんて、多少の自負も有る。
尤も読まれているか、人気はあるのか……とは別次元だけど。

だけどこの作者は一言でいうと『ヤヴァイ』
なにがどうやばいのか……。
それは物書きが罹患するであろう、美辞麗句や取り繕う言葉
より「美しく」花燭する言葉なんてのをこの作品が持っていないこと。
ただ残酷なまでにひたすらに、生々しく現実見る言葉を投げつけてくる。
こちらが受け止められるかなんて関係ない、ただひたすらに投げつけてくる。
そして力強い文脈により、強引に絡め取り僕たちが逃げ出すことも許さない。
そういう魔力を秘めている。

一度読み始め、心と感情が激しく揺さぶられてしかし目を離せない
読み終わった後、適度な疲労感と、まざまざと人の心を見せつけられたかの
ような微妙な後味の悪さ、そしてそういうものだという何処か真理にたどり着いた
かのような満足感を抱いてそっとページを閉じることになる。

上辺だけの文章や、きれいに飾られディスプレイされたお人形さんではなくて
生々しくも蠱惑的で惹きつけられるどういう文章を前に、僕はどうやって
あらがえばいいのか……

もう一度いう、この作者は鬼才か奇人か……

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