31音の錦に包まれた心の恥部を覗き見れば漂ってくる芳香

 医者のもとには体と心を病んだ人たちが、救いを求めてやってくる。

 医者の前では、時に恥部をあらわにしなくてはならない。

 体の恥部よりも見られたくない心の恥部を、31音の錦に包んだかのこの譚をそっと覗き見たならば、往古の京の都から江戸の町に漂ってくる空薫物の芳香が、全身にまとわりつく感覚に陥っていく。

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