愛を知って世界と自分を知る

キャッチコピーに「君がいたから、前を向けた。」 物語が始まるとき、主人公は前を向いていません。

そんな主人公の前に「君」が現れ、主人公は次第に周囲を、大きく言えば世界を知っていきます。

現れてくる世界の有り様は、極めて現実的で、かつ仔細に目をこらさなければ見えないものです。読者は、世界が、厳しくも、信頼できることを知ります。

世界を知ると、自分を知ります。

人は自分が何者であるのか、その一部を他人に預けています。他人から悪魔と罵られれば、自分は悪魔かもしれないと信じるでしょう。しかし、その言葉を信じてよいのでしょうか。本作を読むと、どのような人の言葉を信じるべきか素直に分かります。

そして主人公は愛を知ります。これ以上の愛は想像することも難しいです。読む人も、大きな愛に包まれたことを体感します。

必読です。読み終えたとき、暖かな気持ちに満たされます。

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