事実は小説よりも不可解なり

事実は小説よりも奇なり、と申します。

ここに集められたのは、作者によると、実話とのこと。その内容は……

未遂、と銘打たれているように、はっきりと心霊事件として結末がつくのでなく、かなり変なのだけれど、何が起きたか悩んでしまうもので。

奇なり、と言えば「奇」であることが分かっています。しかし本作に紹介される話は「奇」なのかどうかも分かりません。実に不可解です。

この風合いは小説としては賛否が分かれるところでしょう。明確に納得させてこそ小説というのが一般論です。

実世界の出来事は何が真実だったのか明かされることが珍しいです。それを誠実に文章にすると読者が迷うものになります。事実は小説よりも不可解なり。

小説自身としてはいろいろあるのですが……

読後に、街を歩いたとき、山道に入ったとき、この小説を思い出したならば? だって、有り得るシチュエーションの物語が並んでいるのですから。

あなたの現実がこの小説に侵食されたら、この小説の勝ちです。

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