第4話:不平等
閉ざされた光のささない自室で私は思いに耽っていた。
誰かが言っていた。今日をいきるための些細な理由があればそれだけでいい。と、初めて聞いたとき。私は素敵な言葉だな。と、いつものように聞き流していた。
でも、その言葉は辛いとき私の頭のなかにふっと沸き上がり、私の心をすり減らした。
些細な理由すらない今の私は、どうしたら良いのだろう。そう思ったのだ。
恵まれない環境、恵まれない才能。蔑んでくる回りの視線。自分の状態をみると、世界で一番自分が不幸なんじゃないかとまで思ってしまう。
きっと、それを耐え抜いた人なんかはお前が弱いだけだとか、努力をしないのが悪いんだ。とか言うのだろう。
努力をして報われない怖さを知らないのだ。上手く行ってしまったから。
手元においてあった紐を指で遊ばせながらため息をつく。努力は周りに認知されるから努力になる。成果を残せないのならば、それはただ無為に時間を過ごしているのと変わらないし、端からすればなにもしていないのと大差ないのだろう。
こんな不幸のどん底みたいな話をしているが、家族に関しては、私は恵まれていたのかもしれない。上手くいかなくても寄り添って理解をしてくれる母に、なにかに興味を持てば手を貸してくれた父。才能に溢れているのにも関わらず、私を見下したりせず「ねぇちゃん」と慕ってくれる弟。
だからなおさら、申し訳なくて罪悪感で押し潰されそうになる。
こんななにもない自分に、手を貸してくれる親に、実力もないのに尊敬してくれる弟に。
なんで、こんな私なんかに。と八つ当たりをしたくなる。そんな自分の思いを自覚したとき、私はひどく自分のことを嫌悪した。
こんなに私のことを思ってくれている人に対して、お前は結局自分本意にしか考えられないのかと。
・・・、話が脱線しすぎたようにも思える。結局つまり何が言いたいのかと言えば、最初の言葉に戻るのだが、今日をいきるのが些細な理由であるとするならば、今日死ぬ理由だって、自己嫌悪なんかと言うつまらない理由でも良いじゃないか。ということだ。
首に縄をかけ目を閉じる。なにも思うことがないと言えば嘘になる。もっと努力が実を結ぶような人生を送っていたら楽しかったのではないかとか、ほんとは今からでも努力すれば間に合うのではないかとか、根拠が、ない言葉が頭に浮かんできたりもする。
そんな言葉を見て見ぬふりをして、私は足元の椅子をけり飛ばしたのだった。
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