第2話 機会は突然訪れる

 ソフィーちゃんとの「異世界通話」は順調だよっ。


 毎日お互いの世界の話をするのは本当に楽しい! ソフィーちゃんはどんな話でもとっても楽しそうに聞いてくれる。あたしの普通はソフィーちゃんには普通じゃない。かくれんぼも鬼ごっこも、もちろんけいどろだって知らない。ドッジボールも見たことがないらしい。


 大事なメイって人に聞いても「知らない」と言われたそうだ。ソフィーちゃんとメイは長い間二人だけで生活していて、学園に来て初めてたくさんの人を見てびっくりしたって言ってた。どんだけ田舎で生活してたのかなぁ。ソフィーちゃんはその間のことはよく覚えてなくて、あまり話したくないって言ってた。だからあたしも聞かないようにしたよ。それに、今いる学園の話がすっごく面白いからね!


 学園にいる人はみーんな魔法使いなんだって! それだけでもわくわくするよね? 学園では普通の科目と一緒に魔法の科目があるんだって。魔法の授業のことをメイに聞いたみたら、すごく難しいって言ってるみたい。


「しーちゃんとお話するの、とっても楽しいよ。会えたらいいのにな」


 って言ったから、


「あたしも! ソフィーちゃんに会ってみたいな」


 って答えたんだ。ワールドエンドミスティアカデミー。どんなところなんだろうね? くうぅ、行ってみたいな!


 


 夜、階段を駆け上がると、バン! と大きな音を立てて部屋のドアを閉めた。母さんの怒鳴る声がしたけどそんなの構っていられない。


「あー、もう! なんでよーっ!」


 ベッドにうつ伏せになってしばらくジタバタと暴れまくった。八つ当たりだって分かってるけど、押さえられないよ!


 もうすぐゴールデンウィーク。「連休は久しぶりにお出かけしよう。遠出するのもいいね」って話してたのに、父さんが博物館のイベントで忙しくてドタキャンされてしまったのだ。


 しかも、母さんまでドラッグストアのシフトがどうしても抜けられないみたいで、初日からまさかの留守番確定になってしまった。ゴールデンウィーク初日からあたしお留守番? まさかだよー。


 しばらくジタバタもがいていたら、スマホから通知音が鳴った。


『ソフィーから通話のリクエストがあります』


 急いでアプリを開けて通話ボタンを押すと、一息に言った。


「ちょっとソフィーちゃん! 聞いてよ!」

「え、しーちゃん? どうしたの?」


 ソフィーちゃんに愚痴を思いっきり聞いてもらったらちょっとスッキリした。


「じゃあ、しーちゃん。その日はずっとお家で一人でいないといけないの?」


 ソフィーちゃんが心配そうに聞いてくる。


 そのとき、ピンとひらめいた。


「ソフィーちゃん、決めたよ。あたし、その日、家出する!」

「え、ええー! ちょっとまって、しーちゃん。そんなことしたら危ないよ?」


 心配そうにソフィーちゃんが言ってくれたけど、構わずにそのまま続ける。


「あたしさ、その日はお小遣いもらえるから、そのお金で家出することにするよ!」


 とってもナイスアイデアだと思ったのに、


「しーちゃん。そんなことしたら、め、だよ」


 としかられた。がっくし。落ち込んでいると、


「あのね、しーちゃん。わたし、学園長にお願いしてみるからちょっと待っててね。いったん通話切るけど、かけ直すから!」


 そう言うと通話が切れた。どゆこと? ってはてなになっている間にまた通知が来た。


「もしもし?」

「あのね、しーちゃん。そのお休みの日、遊びに来ない?」

「……はい?」

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