第7話 師匠、誕生

「……よし。無事に危険は回避されたな」


 プロフェッサー芹澤がそう言った途端、ガラガラと目の前の壁が崩れていく。気がついたら壁がどこにも見当たらない。すごい、すごいよ! 思わずプロフェッサー芹澤の手をガシッと掴んで叫んじゃった。


「うわぁ。すごい、すごいよ! ねえ、今の魔法だよね?」

「あ、ああ。私の土魔法が作り出したものだ」

 

 目を丸くしているプロフェッサー芹澤の前で思わずぴょんぴょん飛び跳ねちゃった。


「うわあ、ほんとすごいよ! 本物の魔法だ! 初めてみたよ、かっこいー! ね、ね、あたしにも出来るかな、魔法?」

「お、おお、そうだな。……ふむ。試してみるか?」

「え? いいの? やったー。じゃあ、プロフェッサー芹澤。師匠って呼んでもいいですか?」

「いいとも! それでは詩雛くん、君は私の一番弟子ということにしようではないか!」

「やったー!」


 あたしはこうして師匠の弟子になった。あたしが魔法を使える日も近いかも? 楽しみだよっ。


     


「それでは詩雛くん、早速実験を始めようではないか」

「はい、師匠! ……」


 あたしは師匠の講義を聞きながら実験を開始した。師匠の話によると、魔法は属性がわからないと上手く作動しないらしい。その属性を調べるためって言われて実験してたんだけど……


 どっかーん。


 なぜか爆発してしまった。


「何故だ、何故そこでこのような反応が起こる!?」

「あははははは。すっごーい! さっきのはこれかー。びっっくりしたー!」


 二人で騒いでいると、突然目の前に顔を真っ赤にして怒っている女の人が現れた。綺麗な銀色の髪がポニーテールにしてあって、不思議な紫色の瞳の美人さんだ。でも瞳が吊り上がっている。

 

「あなた達、そこに座りなさい!」


 ビシッと床を指差され、きょとんとしていると、


「さっさと座る!」


 そう言って、ダンダン、と足を踏み鳴らした。仕方なく床に師匠と二人正座すると、その前でふん、と鼻息荒くして大声で叫ぶ。


「芹澤! そしてソコの不法侵入者! よくもソフィーちゃんを危ない目に合わせたわね!?」

「え、そっち?」


 てっきりさっきの爆発を怒られると思ったんだけど?


「不法侵入のアナタ、さっきはよくもソフィーちゃんを引き摺ったわね!?」

「え、何で知ってるの?」

「私は何でも知ってるのよ、ソフィーちゃんのことならね! ソフィーちゃんを引き摺り回し、危険に合わせた罪は重いわよ!」

「え、ええー?」


 その時、入口から静かな声がした。


「リーゼ。それは今、叱るべきことかしら?」 


 その声と一緒にさーっと冷たい風が流れてきた。その声にぎくりとしたリーゼさんが、ぎこちなく振り向く。


「言乃花、あの、これは……」

「一番騒がしいのは誰かしら?」


 その笑顔を見た途端に、肩を落としたリーゼさんはすごすごと師匠の隣に並んで正座した。



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