第8話 それじゃあ、またね!

 実験室に入ってきたのは、肩で切り揃えたまっすぐな黒髪に眼鏡をかけた女の人。風はその人から吹いてくるみたい。さすが魔法学園だね。じーっと見ていると、その人は手を差し出して私を立たせてくれた。


「あなたがしーちゃんね。初めまして。椿つばき 言乃花ことのかです。怪我はない?」

「あ、うん。大丈夫。はじめまして、言乃花お姉ちゃん」

 

すると言乃花お姉ちゃんは優しく微笑んでくれた。それから、


「しーちゃん、ここは副会長が個人の実験室として使っている部屋よ。危険なものがたくさんあるから、なるべく入らない方がいいわ。分かったものじゃないわよ」

「え? そうなの? 師匠、魔法のこといっぱい教えてくれたよ。実験失敗しちゃったけど、面白かったよ!」

「そう? あ、ソフィーちゃん、少し長くなるから座ってて」

「はい」


 その時、初めてソフィーちゃんが心配そうに見てくれていたことに気付いた。実験に夢中になってて全然気付かなかったよ。友達を放ってちゃ駄目だよね、反省反省。謝らなくちゃとソフィーちゃんの側に行くと、


「副会長。後でお話を伺いますのでそのままでお待ち下さいね」


 言乃花お姉ちゃんが笑顔で言うと(笑顔がコワイ気がするのは気のせいだよねっ)、師匠の視線がどんどん遠くなり、もぞもぞと身体を動かし始める。


「リーゼ。あなた、何をやっているの? 冬夜くんやメイさんに校内を捜索させる必要はあったのかしら。あなたがそこまで怒るほどのことかしら?」

「う、それは、あの……。とにかく不審者であることに変わりはないでしょう!」

「そうね。彼女はの子なのよね? 確かに警戒するのもわかるわ。でも、それは副会長が確かめたのではなくて?」


 リーゼお姉ちゃんがジロリと師匠を睨みつけたけど、師匠は知らんぷりしている。なんだか面白いことになってきたよ! 言乃花お姉ちゃんが、机の上の実験記録をちらりと見ていきなり破り捨てた。


「ああっ! 貴重なサンプルに何てことをっ!!」


 悲鳴を上げて立ち上がろうとした師匠が、見事にすっ転んだ。


「うわっ、何だこれは!? 私の下半身はどこへ行ったのだ!?」

「バカなの? しびれただけでしょう!?」


 こうしてあたしの最初の異世界転移は楽しく始まった。


 ── この後どうなったかって? 


 少しだけ教えるとね、あたしは今でも時々学園にお邪魔してるんだ。迷宮図書館にも、もちろん行ったよ。それから師匠の弟子として魔法の修行も始める予定なんだ。詳しく知りたかったら、あたしの小説を探してみてねーっ!




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アプリを使ったら転移しちゃったので、異世界の学園に探検に行っちゃいました! まりんあくあ @marine-aqure

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