第6話 はじめてのかくれんぼ

 すぐに下から声がした。


「あ、レイスさん。女の子とソフィーを見ませんでしたか? リーゼがめちゃくちゃ怒りながら探してるんですけど」

「ども、冬夜さん。や、自分は見てないっすね」

「そうですか。もし、見かけたらリーゼさんに連絡お願いします」

「了解っす」


 なんだ、冬夜兄ちゃんだったのか。冬夜兄ちゃんもソフィーちゃんの友達だ。隠れることなかったな。だけど探検にはこういう雰囲気も大事だよねっ!


「よし、危険回避。ソフィーちゃん、これがかくれんぼだよ」

「え、かくれんぼ?」


 ソフィーちゃんの目がキラキラと輝いた。


「そう。この場合冬夜さんが鬼で、あたしたちは見つからないように隠れる役だねっ。かくれんぼは鬼に見つかったら負けだから、今回はレイス兄ちゃんのお陰でセーフ。レイス兄ちゃん、助けてくれてありがとう」


 そう言ってペコリと頭を下げるとレイス兄ちゃんが言った。


「どうってことないっすよ。ところでソフィーさん、こちらは?」

「お友達のしーちゃんです。今日は一日遊びに来てくれました。今は学園を探検? という案内をしています」

「探検とは面白いっすね。何か発見はあったんすか?」

「まだこれからかな。迷宮図書館を探してたんだよ。こっちにはないみたいだけど、せっかくだから校舎も探検しちゃおうと思って」

「それでこんなところにいたんすね。おっと、」


 突然レイス兄ちゃんはあたしたちを踊り場に手招きしてサッと二階へ駆け上がる。そこでこちらに向けて唇の前で人差し指を立てると姿を消した。すぐに顔を見せて、


「今なら大丈夫そうっすよ。三階を先に探検するのがお勧めっすね」


 と言って親指を立てた。


「ありがとうレイス兄ちゃん。じゃあ、三階に突っつ撃ー!」


 ソフィーちゃんを引っ張って三階へ上がると、それまでの階と同じように左側には教室がずらりと並んでいる。レイスお兄ちゃんが言ってたのはこっちかな? 右側の通路へ踏み出した途端、


 どっかーん。


 え? 爆発?


「何? 今の音」


 びっくりして思わず立ち止まるとソフィーちゃんが言った。


「たぶん、プロフェッサー芹澤の実験じゃないかな?」

「え? 実験? それってもしかして魔法使ってる?」


 うーん、わくわくしてきたよっ。


「よし、探検だー」

「しーちゃん、気をつけないとあぶないよ」


 気にせず進んでいくと一つの教室に明かりがついているのが見えた。中に背の高い白衣を来た男の人がいる。モクモクしてるのは煙かな? ボサボサの青い髪に手を入れて、ガシガシとかきむしりながらブツブツ独り言を言っている。黒縁の眼鏡をかけてて見るからに研究者っぽい雰囲気だ。よしっ。ガラッと扉を開けると、


「失礼しまーっす。すっごい音がしたので見に来ましたー」


 そう声をかけたら、


「む? なんだね君は。見かけない顔だな」


 怪しまれたよ。すかさずソフィーちゃんが、


「プロフェッサー芹澤、この子は私のお友達のしーちゃんです」


 って紹介してくれた。


「おお、君がそうか! 私は芹澤せりざわ 玲士れいじ。ようこそ我が実験室へ。私のことはプロフェッサー芹澤と呼びたまえ」

「はじめまして小鳥遊 詩雛です。ね、ね、何の実験してたの?」

「よくぞ聞いてくれた! この実験は……む、まずい。君達こちらへ」


 突然プロフェッサー芹澤がそう言うと壁際に並んで立たされた。素早く隣に来ると、


「静かに。決して音を立てないようにしてくれたまえ」


 と言うから黙って口を押さえていると、突然目の前に壁が現れた。同時にバタバタと廊下を走ってくる音がして、続いてダンと床を踏む音が。


「せーりーざーわー! あんたまたなの!? 何回言ったら気が済むのよ、って。あー、またいないー! どこへ行ったー! 不審者が侵入して皆が大捜索してるっていうのに! もう!」


 誰かがそう言ってまたバタバタと廊下を走って戻っていった。

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