第5話 学園を探検するよ!
門を抜けると、目の前にはものすごーく広い中庭があった。真ん中に大きな噴水があって側には東屋が建っている。あそこがいつもソフィーちゃんが使ってるって言ってた東屋かな? だとしたら近くにソフィーちゃんが世話をしているっていう花壇もあるはずだ。……それに、ここに迷宮図書館があるはずなんだよね、楽しみー!
「さて、詩雛くん、ソフィー。今日はお休みで授業はないから、学園の中では自由に行動してもらっていいよ。けれど、寮の中に入るのだけはやめて欲しいな、プライベートな場所だからね。夕方四時にはここに戻ってくること。鍵の閉まっている部屋には入らないこと。それから門の外に出るのも禁止だよ。何か質問はあるかな?」
学園長に聞かれて、あたしは「はい!」と手を挙げた。
「迷宮図書館を探検してもいいですか?」
「ははっ。そうだな、
「やったー!」
思わずその場で飛び跳ねると学園長が、
「じゃあ、行ってらっしゃい」
と手を振ってくれた。
「行ってきまーす!」
早く学園に入りたくてあたしは猛ダッシュで校舎を目指した。
この時は気付いてなかったんだけど、ソフィーちゃんは足がついていかなくて思いっきり引きずられていたらしい。てへっ。
「迷っ宮っ図っ書館っ。迷っ宮っ図っ書館はどっこかっなー」
あたしは校舎の中にいた。目の前には階段と左右に伸びる廊下。きょろきょろと辺りを見回して右手に狙いを定める。
「ふふん、図書館はあっちかな?」
「しーちゃん、ちょっと待って」
その声で手を繋いだままのソフィーちゃんを見ると、軽く息を切らしている。
「ごめんねソフィーちゃん、いきなり走ったりして。異世界の学園探検だ! って思ったら、ついわくわくしてダッシュしちゃった。大丈夫?」
「大丈夫よ。ちょっとびっくりしただけ。しーちゃん、足速いのね」
「うん、リレーとかは得意だよ。もちろん鬼ごっこもねっ。さてと、探検を始めますか」
歩き出そうとするとソフィーちゃんが言った。
「しーちゃん、迷宮図書館はそっちじゃないよ」
「そうなの? でも、せっかくだからこっちも探検!」
そう言って歩き出すと、しばらくしてL字の角に突き当たった。右手に長い廊下とずらりと並んだ教室が見える。
「ここは、一年生の教室よ」
「ふーん。あたしが知ってる教室と変わらないねっ、て。文字が読めなーい! こんなところで異世界実感だよっ」
「しーちゃん読めないの?」
「あたしが知ってる文字とは全然違うよ。ほんとに異世界なんだなー」
そのとき、バタバタと遠くから足音が響いてきた。
「あ、レイスさん」
これがレイス兄ちゃんかー。ソフィーちゃんのお友達の一人だ。……はっ、ヤバい。さっきの人に気付かれちゃうよっ。敵かも知れないじゃない?
「しっ」
ソフィーちゃんに人差し指を口に当てて合図を送る。首をかしげているソフィーちゃんをそーっと二階へ誘い、レイス兄ちゃんを見上げると、優しく微笑んでウインクした。レイス兄ちゃん、わかってるー!
そのままそーっと二階へ上がり、教室の壁に沿って二人で隠れた。
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