あとがき
もう一つのクリスマスキャロルをお読みいただき、ありがとうございます。わたしの作風をよくご存知の方は、やっぱり直球じゃなかったかあと安心されたことでしょう。
短編ですし、内容的にあれこれうんちくぶちかます内容でもないので、あとがきはあっさりで。
◇ ◇ ◇
まず。本話は非常に変な位置付けの作品になります。こういうジャンルというカテゴライズは出来ないんですよ。(やれるもんならやってみやがれ)
エスエフ要素はありますが、わたしには論理の辻褄を合わせるつもりがありません。
ホラー要素はありますが、ちっとも怖くはありません。
笑い話? 笑えないですよねえ……。
人情噺? ハートウォーミングストーリー? まーさーかー。
人生訓でもノウハウものでもありませんし。
怪奇譚でも奇跡話でもありません。だって、全ては梶浦が一方的に語っただけ。そのどれくらいが事実なのかは、梶浦自身にもわからないのですから。
なんで、そんなもやあっとした話にしたのか。話の中身の一部ではなく、そっくり全部を読者さんに預けたかったからです。
シンパシーで繋がっている三人の男。でも、その背景がいくらか明かされたのは梶浦だけです。浅野の分はほんの一部。大将に至ってはまるっきり白紙のままになっています。背景や心情の穴埋めを読者さんにしていただくことで、話がいかなる方向にも膨らむように仕立てました。
以前お送りした長編『プレゼント』の短編版という感じかもしれません。あの時も、プレゼントは探して持って行ってねという風にしましたから。
本作は短い分、探すのではなくプレゼントを各自作ってくれという超絶怠け者仕様になっているわけでして。えへ。
◇ ◇ ◇
ディケンズの名作を引き合いに出しましたが、わたしはその作品を賛美も批判も致しません。好みではありませんが、解釈の自由度は決して低くないと思っているからです。
梶浦にとって、ディケンズの原作は自分の経験してしまった変な事態をこなすために見比べた素材の一つに過ぎません。ですので、いいところは取っていらないところを捨てたという扱いをしています。わたしも、ディケンズの原作を同じように扱いました。だから梶浦の一人称ではなく、客観性が担保される三人称で展開したんです。
読者のみなさまにおかれましては、訳のわからないわたしの短編を丸呑みしないで必ずバラしてくださいまし。あちこちに空きっぱになっている部分を各自で足したり引いたり盛ったりすれば、きっとみなさまオリジナルのクリスマスストーリーができるはず。
わたしはそれを楽しみにしています。
もう一つのクリスマスキャロル 水円 岳 @mizomer
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