5「真実」

 それは立場が違う者達の恋物語が綴られた短編集だった。

 表題の『美しい花』はこんな話だ。

 一輪の花に恋をした魔法使い。彼は魔法で花を人間の女性にした上で告白するが、断られてしまう。

 理由は単純だった。

 姿を変えても所詮魔法使いと植物。寿命が違いすぎる。

 そして女性が元の姿に戻り、魔法使いがそれを嘆くというのが話の結末だった。

「あなたの大伯父さん、私の大伯母さんのことが好きだったんだね」

「間違いないね。この本を見るに叶わぬ恋と思っていたようだけど……」

 ロトリーが言葉を濁す。代わりに私が声に出した。

「絶対両想いだったよ。だって大伯母さんずっと独身だったもん」

「僕の大伯父さんだってそうさ」

 全てを読み終えた私とロトリーは全く同じ考えを持っていた。

「ねぇロトリー、改めて友達になろうよ」

「奇遇だね、マリ。僕も言おうとしてた」

 それから私達は定期的に書斎でブックトークをしている。

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魔法使いの本探し チェンカ☆1159 @chenka1159

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