とても味わい深い文章。作者様のお人柄によるものだとしても、それを読ませる文章力に感服です。囲碁の一手一手に合わせるかのように、ゆっくりと実るように進んでいく物語。豊かだなぁと、驚き、憧れるようなため息が漏れました。物語が内包する穏やかな時間が、日常の喧騒を忘れさせてくれます。しっとりとした手触りが、物語にさらなる彩を与えてくれます。良い時間を過ごせました。ありがとうございました。
手紙のやり取りで囲碁を打つという郵便碁をすることになった主人公。なにかと忙しい現代だからこそ、ゆっくりとした時間が流れる郵便碁は読んでいてともて気持ちの良いものでした。つい自分も誰かに手紙を送ってみたくなる、そう思えるような温かいお話です。
近年、SNSが普及し、常に脳内が忙しく携帯に支配されているような気さえします。そんなな、この作品と出会い、手紙へのテンポ感は来るのを楽しみに待つなど静の中で物語が動いてました。受け継がれる思いや、新しく生まれた繋がりなど心温まる作品でした。是非、読んで見てください。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(131文字)
囲碁の対局を郵便葉書の交換で行うことがあるのを知りませんでした。スピードが求められ、なにもかも瞬時に消え去るような世の中で、味のある絵葉書のやり取りは、そこだけゆっくりじっくり時間が流れるようです。亡き祖父のあとを引き継いで碁盤に向かう主人公は、葉書の中にどんなことを見つけていくのでしょうか。デジタルなやり取りでは得られない深みが全編を包み、失われつつある情緒を感じます。囲碁を知らない人でも存分に楽しめる、ひとの温度を感じる物語です。
最近ではタイパなどといって、時間はかからずに成果が上がる方がいいという風潮ですが、時間をかけるからこその楽しみや喜び、そうして学びというものがあると思います。 郵便碁というあまりメジャーではない主題を通して、物語ではただただゆっくりと時間が進んでいきます。 春夏では無くて秋冬が似合うようなそんな話だと思いました。
便利に慣れると心がひんやりしてきませんか? 読後、アナログの中にある『繋がり』と『時間』で心がじんわ~りとあたたかくなりました。とても素敵な作品です!