第9話 さてミス研の結論は?


 流石に部長はイライラしていた。

「まぁ、まぁ、帆蟻部長。そんなにイライラするなよ」

 蓮副部長がなだめた。

「だってよ。垰田のやつから俺に”研究会を私物化するな“って言われたんだぞ~」

「垰田! お前、帆蟻部長に謝るんだ!」

 すると垰田くんは立ち上がって、帆蟻部長に対して、素直に頭を下げて、

「申し訳御座いませんでした。私の言いすぎでした」

 素直に深く頭を下げて謝った。

「さぁ、垰田君もこうやって謝っているじゃないか。機嫌を直せよ」

 蓮副部長が間を取り持った。更に続けて、

「結局! 皆どうするんだ? 結論を出せよ」

 皆をじろりと見回した。そして、蓮副部長も立ち上がると、

「俺は、帆蟻と共に行動しようと思っている」すると同じく四年生の桜庭も、立ち上がり、

「俺も同意見だ❗」

 力強く賛成の意を表した。

「成る程。つまり四年生の皆さんは賛成すると言うことですね。しかし、良いのですか? 就活の時期でもありますよ」

 三年生の吉田君が言った。

「勿論。結構だ」

 四年生は口を揃えて答えた。

「あの~、こんな議論の最中に何なんですが、そのキャンプの費用は一人どのくらい必要なんでしょうか」

 吉田君が恐る恐る尋ねた。

「無料だ❗」

 帆蟻部長が答えた。

「彼女のために、キャンプをしてくれと言うのだから、彼女に確めたら全部無料と言うことだ」

「えっ、む、無料なのか。高倉さん、太っ腹~。え-それでしたら四年生の三人の気持ちは良く判ったので、後は私達一年から三年生だけで話し合いをさせて貰えないでしょうか? 結論が出たら直ぐに報告に伺います」

 吉田君が部長に問いかけた。

「よし、判ったので、俺達はそこのキャンパスの芝生の上にいるから、吉田君が纏めた意見を持ってきてくれ。四年生は一旦席を外そうぜ」

 と言って三人は部屋から出ていった。


       *



 三年生の吉田君は四年生が部屋を出ていくのを確認すると、残りの皆を見渡して言った。

「と、言うことだ。今から一年生から三年生だけの話し合いを始めようじゃないか。四年生がいないから、みんな誰も腹蔵なく自分の意見を言ってくれよ」

 吉田君は自分の席に座り直すと、両手をテーブルの上に組み、発言を待った。

 静まり返った部室のなかで、口火を切ったのは巨勢君であった。

「俺の個人的な意見としては、高倉さんが“何か良くないことが起こりそう……”と言った言葉だ。良くないことって何だ! 事件性のあることなのか? 怖い現象が起こるといったことなのか? 危険性のあることなのか? ハッキリしない言葉だし、危険なことが起こるということならば、一年生の愛梨さんと三年生の佐伯先輩と髙梨先輩の女性三人は行かない方が良いと思うんだけど、そこのところどうだろう?」

「う~ん、そうだね。そうした方が無難かな、とは思うね」

 と吉田君が言った瞬間に、女性群から反論が飛び出した。

「なにイッテんのよ! ここで女子がどうとか、言ってる場合じゃ無いでしょ!」

 三年の佐伯真梨子が叫んだ。

 眉間に皺を寄せて叫ぶことではないだろうに。

 しかし、同じく三年の高梨百合子も賛同した。

「そうよ! 真梨子のいう通りだわ。ここで部員の間でゴタゴタしてミス研の絆が切れたらどうするのよ! ミス研二十年の歴史に傷が付くわ」

 百合子先輩も声だかに言った。

「ミス研の部員はみんな心がひとつじゃないの? “何か恐いことが起こりそうだとか、危険性があるとか”ふざけんじゃないわよ。コチトラお嬢様育ちじゃねえんだっツウンダヨ‼」

 百合子先輩って、こんな性格だったったっけ? 巨勢勇気は思った。

 は、は~ん、百合子先輩は部長に好意を持っているんだな~。

 そして吉田先輩が確認した。

「ソウカイ、それでいいんだな? 女子三人は? 百合子に、真梨子に、愛李ちゃんは」

 三人は揃って頷いた。

「勿論よ❗」

「勿論さ❗」

「わ、私もOKです」

 揃って三人が肯定した。

「ヨシッ、そんなことなら何も問題ないじゃないか。俺、先輩たちに報告してくるよ。いいんだな! みんな」

「了解でーす」

 皆が口を揃えて答えた。

「ヨシッ、それじゃあ、俺が先輩たちに伝えてくるからな」

 と言って、部屋から駆け出していった。

 四年生が部屋に帰ってきて、

「有り難う。みんな。では今年のキャンプは全員参加でいいんだな」

 帆蟻部長が確認すると、

「もう一度高倉さんと、良く協議をして、再度みんなに集まってもらい細部までの日程を決めたいと思います。一先ず今日はこの辺で、又みんなに連絡をするから、集まってくれよ」

 と部長は嬉しそうに答えた。そしてミス研のみんなは解散した。

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ブラックレガシー❗ 淡雪 隆 @AWAYUKI-TAKASHI

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